ミナスのベーシスト、ペドロ・ゴメスのデビュー作
ブラジル・ミナスジェライス州のベーシスト/作曲家、ペドロ・ゴメス(Pedro Gomes)の初のリーダー作となる『Magma』。サックス、トロンボーン、ピアノ、ギター、ベース、ドラムスというセクステット編成で現代のミナスらしい複雑さと美しさを持った豊かなアンサンブルを聴かせてくれる。
ベロ・オリゾンチ生まれのペドロ・ゴメス。ミナスジェライス連邦大学(UFMG)で音楽を学び、器楽奏者として、これまでにフラヴィオ・ベントゥリーニ(Flavio Venturini)、アナ・カロリーナ(Ana Carolina)、ヂオゴ・ノゲイラ(Diogo Nogueira)、トニーニョ・オルタ(Toninho Horta)といった著名なミュージシャンと録音をしてきた。
これまでにも自分のアルバムをつくるという考えがあったが、2021年にブラジルで最も主要な音楽賞のひとつで多数の優れた若手器楽奏者の登竜門であるBDMG Instrumental Awardを受賞し、Sesc Instrumental Brasilで演奏する機会を得たことがアルバム実現のトリガーとなった。
収録の楽曲はいずれも柔軟性に富んでおり、アンサンブルを意識した丁寧な作編曲が随所に現れており聴きごたえも抜群だ。曲中に頻繁に挟まれる変拍子やBPMの変化など、近年のミナスのジャズ周辺の傾向と呼応する構造の複雑さだが、聴き心地は柔らかく快い。ペドロが最近影響を受けた音楽家としてはセルジオ・サントス(Sergio Santos)、ジョアン・ボスコ(João Bosco)、ムニール・オッスン(Munir Hossn)、アミルトン・ヂ・オランダ(Hamilton de Holanda)といったブラジル勢の他にもブラッド・メルドー(Brad Mehldau)、リチャード・ボナ(Richard Bona)そして特にアヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)の名前を強調して挙げており、そうした多様な音楽からの学びを自身の音楽に反映させている様が窺える。
ジョアン・マシャラ(João Machala)の温かみのあるトロンボーンの音色も非常に印象的だ。テナーとソプラノサックスを担当するブレノ・メンドンサ(Breno Mendonça)との絡みも効果的で、アルバム全体に深みを与えている。
(5)「Fugindo do Sete」ではアレシャンドリ・アンドレス(Alexandre Andrés)がフルートで、アウグスト・コルデイロ(Augusto Cordeiro)がガットギターで参加。特に本作では全曲で録音技師も務めているアレシャンドリ・アンドレスのフルート・ソロは目を見張る素晴らしさだ。
今作のリリースに伴って公開されたペドロ・ゴメスのホームページでは、今作の全曲の楽譜(パート譜)もダウンロードが可能となっている。譜面を追いながら聴くことで、この素晴らしい音楽をより深く理解する手助けとなるだろう。
Pedro Gomes – bass
Paulo Fróis – drums
Breno Mendonça – tenor saxophone, soprano saxophone
João Machala – trombone
Lucas de Moro – piano
Samy Erick – electric guitar
Augusto Cordeiro – nylon string guitar (5)
Alexandre Andrés – flute (5)