フランスのジャズ・ピアノ奏者ポール・レイ、ベートーヴェンの人生に想いを寄せるソロピアノ集

Paul Lay - Full Solo

ポール・レイ、ベートーヴェンの人生に想いを寄せるソロピアノ集

2010年代以降のフランスのジャズ・シーンを代表するピアニスト、ポール・レイ(Paul Lay)による、彼自身初の全編ソロピアノのアルバム 『Full Solo』。今作はベートーヴェンへのリスペクトをテーマにした珍しいジャズ作品となっており、ベートーヴェンに縁の深いウィーンで書かれたというポール・レイのオリジナル数曲と、(3)「交響曲第9番」、(5)「月光ソナタ」、(7)「エリーゼのために」といったベートーヴェンの名曲のジャズ・アップで構成されている。

(1)「バガテル WoO 52」から、左右両手ともに非常に粒だちの良いクラシック・ピアノのようなタッチで自由に即興演奏が繰り広げられる様子は爽快。テクニック、クリエイティヴィティともに圧巻の演奏が続き、ベートーヴェンの名曲群が新鮮に蘇る。

どことなくノスタルジックな(7)「La Lettre à Élise(エリーゼのために)」

(7)「エリーゼのために」は、その創意溢れるミュージック・ヴィデオにもあるように、他の何百万人の子供たちと同様に子供の頃のポール・レイにとってピアノとともに長い時間を過ごした大切な思い出の曲だ。幼少期の素直さ、不注意、そして無限の創造性をそのまま表したかのような無邪気なアレンジが楽しく、楽譜から離れて自分だけの“音楽”となる瞬間が捉えられた美しさが内在している。

そうした古典的な曲の再解釈に混ざって、今作にはポール・レイのオリジナルも挿入される。
「In Vienna」と題されたいくつかの曲は組曲形式となっており、その名の通りモーツァルトも過ごしたウィーンを訪れ滞在した期間に書かれたもの。組曲のラストは「Heilingenstadt」の副題が付けられており、ベートーヴェンが難聴を苦に自ら命を絶つことを考え弟に宛てて書いた「ハイリゲンシュタットの遺書」を想起させる。

Paul Lay プロフィール

ポール・レイは1984年フランス・ピレネー=アトランティック県の町オルテズ生まれ。母親は歌手で、彼の初期の音楽教育に重要な役割を果たした。トゥールーズの地方音楽院で学び、その後、パリ国立高等音楽院のジャズコースでリカルド・デル・フラ(Riccardo Del Fra)らに師事。2010年に自身のトリオでアルバム『Unveiling』をリリースしデビューした。

カルテットで録音した2014年の2nd『Mikado』は絶賛され、アカデミー・シャルル・クロスによってその年の最優秀ジャズ・アルバムを受賞。2016年にはアカデミー・デュ・ジャズが最も優れたフランスのジャズ・アーティストに贈るジャンゴ・ラインハルト賞を受賞するなど、フランスのジャズ・シーンを代表するピアニストとなっている。

Paul Lay – piano

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