オマール・ソーサとチガナ・サンタナ。共通のルーツへの畏敬の念によって結ばれた深淵なデュオ作

Omar Sosa & Tiganá Santana - Iroko

オマール・ソーサとチガナ・サンタナによる初デュオ作『Iroko』

キューバのピアニストのオマール・ソーサ(Omar Sosa)と、ブラジルのシンガーソングライター/ギタリストのチガナ・サンタナ(Tiganá Santana)のデュオ・アルバム『Iroko』は、世界的にも稀に見る才能を持つ二人の音楽家による深淵な語らいが垣間見える傑出した作品だ。

キューバとブラジル。距離的には離れていれど、この二人には共鳴し合うものがある。いずれもサハラ以南のアフリカにルーツを持ち、ヨルバ人に由来する民間信仰(キューバのサンテリア、ブラジルのカンドンブレ)に影響を受け、神々と対話するような音楽を表現するアーティストだ。本作ではそんな二人の邂逅によって生まれた途轍もなく静謐で精神的な格調の高い音楽が繰り広げられている。

(8)「Bloco Novo」

収録曲は二人のオリジナルのほかに、アフリカの伝承曲をもとにした(1)「Iroko」、(3)「Muilo」、(9)「Kitembu」も含まれている。一部では鳥や虫たちの鳴き声といった自然の音もサンプリングされており、そうした演出がよりルーツへの畏敬の念を膨張させる。

アルバムタイトルの“イロコ(Iroko)”とはアフリカに広く自生する樹木で、家屋や造船、家具、打楽器“ジャンベ”の胴などで用いられている。ヨルバ人はこれを地球上で最初に植えられた聖なる樹木と見做している。イロコは先祖の守護神であり、気象変動の力であると同時に、何世紀にもわたる森林の力の源と考えられている。

プロフィール

ピアニストのオマール・ソーサ(Omar Sosa)は1965年キューバの内陸都市カマグエイ生まれ。5歳頃から最初はドラムスやパーカッションで音楽を学んできた。
伝統的なアフロ・キューバン音楽、ショパンやバルトーク、サティなどヨーロッパのクラシック音楽、セロニアス・モンク、ジョン・コルトレーン、オスカー・ピーターソン、ハービー・ハンコック、チック・コリアといったジャズ、そしてチューチョ・バルデス率いるキューバの伝説的バンドのイラケレ、さらにはヒップホップやエレクトロ・ミュージックなど多彩な音楽から影響を受けている。これまでに30枚以上のアルバムをリリースしており、グラミー賞にも何度かノミネートされているスピリチュアル・ジャズの巨匠である。

チガナ・サンタナ(Tiganá Santana)は1982年ブラジル・バイーア州サルヴァドール生まれ。9歳の頃から詩曲の制作を始め、ギターは14歳の頃に始めた。
幼い頃からブラジルの土着宗教カンドンブレに触れて育った彼は、自身のルーツであるアフリカへの強い探求心が創作活動の源泉となっており、自身のソロ作品の他に国内外のアフリカ系ミュージシャンとのコラボレーションを積極的に続けている。彼はまたバイーア連邦大学(UFBA)で哲学の学位を取得、サンパウロ大学 (USP)では文学博士号を取得している。
ギター、パーカッション、ヴォーカルなど複数のパートを担当するが、とりわけ彼のスタイルは深い思慮に満ち、瞑想的。ブラジルのアフロ・ディアスポラを代表する音楽家として注目されている。

Tiganá Santana – guitar, percussion, vocal
Omar Sosa – piano, percussion, kalimba
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effects, vocal

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