コロンビアから現れたジャズ新星ヘスス・モリーナ、新譜は女性チェリストとの抒情的デュオ

Jesus Molina - Cello Stories

ヘスス・モリーナ新譜はチェロ奏者HAEINSANEとのデュオ作

コロンビア出身のピアニスト/作曲家ヘスス・モリーナ(Jesús Molina)は日本ではほとんど紹介されておらずほぼ無名のアーティストだが、超絶技巧のジャズ・ピアニストであり、ピアノだけでなくサックス、弦楽器なども弾きこなす素晴らしい才能を持った新世代の音楽家だ。実力はあっても有名とは言えないジャズ・ミュージシャンは多いが、彼の場合はInstagramでフォロワーを60万人抱えるなど、名実ともに今もっとも注目されているジャズ・ミュージシャンのひとりであることは疑いようがない。

2019年作『Agape』はマイク・スターン、ランディ・ブレッカー、アントニオ・サンチェスなどなど新旧の名手たちを多数迎え、彼の幅広い音楽性と圧倒的な技巧といった才能が発揮された“名盤”と呼ぶに相応しい作品だった。

そんな彼が2022年に新たに送り出した作品が、韓国出身のチェリストHAEINSANE(Haein Kim)との極上のデュオ作品『Cello Stories』だ。
今作はサウンド面の派手さは一切なく、ピアノとチェロのアコースティックなデュオとなっており、シンセサイザーも駆使しながら超絶技巧的表現を次々と繰り出すヘスス・モリーナのイメージからすると意外性に満ちた内容となっている。

季節をテーマにした楽曲群はすべてヘスス・モリーナの作曲で、超絶技巧よりも色彩を感じさせる叙情的な作品に仕上がっている。軽快なタッチのピアノと深みのあるチェロの音色は重すぎず軽すぎず相性も抜群で、若手らしい勢いもあり、ラテンの成分も濃いめのアンサンブルはなかなか他では聴くことのできない個性を放つ。ヘスス・モリーナという現代ジャズにおける新たな才能の、これまでにあまり見せなかった側面を堪能できる発見に満ちた作品と言っても過言ではないだろう。

(5)「Snow Love」。ヘスス・モリーナの服には「イエスが救う」という日本語も見える。
「ヘスス」という名はギリシャ語で「イエス」、英語で「ジーザス」、つまりキリスト教創始者の人物名だが、スペイン語圏では男性名として一般的に広く用いられている。

Jesús Molina & HAEINSANE プロフィール

ピアノと作曲を担当するヘスス・モリーナ(名前を英語読みしたジーザス・モリーナというカナ表記も見られる)は1996年コロンビア北西部、スクレ州都シンセレホ生まれ。12歳でサックスを始め、15歳からはピアノに集中。2014年頃から様々なジャズフェスティヴァルに出場し脚光を浴びると、2016年にはラテン・グラミー文化財団から奨学金を授与され、米国のバークリー音楽大学で学んだ。
2017年にフルアルバム『For You』でデビューしている。

一方のチェロを弾くHAEINSANE(Haein Kim)は韓国のアニャン(An-Yang, 安養)に生まれ、12 歳のときに家族でフィジーに移り、その2年後にニュージーランドに移住したという経歴の持ち主。ニュージーランド滞在中にクラシック・ピアノとチェロを学び、コンクールで数々の賞を受賞。2011年、彼女は米国ニュージャージー州サマーズポイントに移り、舞台芸術高校に通い、その後バークリー音楽大学で学んだ。
彼女のInstagramでは楽器もチェロよりもピアノをメインとしている様が窺え、今後さらに注目されるであろう才能だ。

(6)「Green Christmas」。
ヘスス・モリーナは南米コロンビアの出身。彼にとってのクリスマスは、冬ではなく夏のイベントだ。

Jesús Molina – piano
HAEINSANE – cello

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