Snarky Puppy のマイケル・リーグとビル・ローレンス、新たな音楽表現を追求するデュオ作

Bill Laurance & Michael League - Where You Wish You Were

地中海沿岸の伝統楽器を試みるマイケル・リーグの新たな道

スナーキー・パピー(Snarky Puppy)の中心人物である二人、ベーシストのマイケル・リーグ(Michael League)と鍵盤奏者のビル・ローレンス(Bill Laurance)のデュオ作がドイツの名門レーベルACTからリリースされた。北アフリカやトルコなどの地中海沿岸地域の音楽への傾倒を強めるマイケル・リーグらしく、今作はウードやフレットレス・ギターを用いるなどスナーキー・パピーとはまた異なるアプローチが全面的に押し出された魅力的な作品となっており、『Where You Wish You Were』というタイトルからも遠い異国の地や文化、まだ聴いたことのない音楽に対する彼らの強い好奇心が窺える内容となっている。

(4)「Sant Esteve」

今作でマイケル・リーグが弾く楽器は中東のウード、北アフリカのンゴニ、さらにはフレットレス・バリトン・ギターなどいずれもフレットを持たない弦楽器だ。十二平均律から解放され、やろうと思えばいくらでも微分音などの表現が可能なこれらの楽器を用いてマイケル・リーグは彼自身の新しい表現方法を模索しているように思える。旋律の中での大胆な微分音の使用は今作品ではほぼ見られず、西洋的な音楽表現の中に地中海周辺の民族楽器を持ち込んだような構図に留まってはいるものの、大所帯のスナーキー・パピーから離れ新たな翼を手に入れ、まさしくこれからローンチしようとする面白さ・これからどんな事が起こるのだろうという期待感を抱くには充分すぎる音楽だ。

一方、スナーキー・パピーではシンセサイザーも駆使するビル・ローレンスは、今作ではアコースティックな表現と響きを徹底的に追求している。楽器もグランドピアノではなくアップライトピアノを使っており、アップライト特有の少しこもったような音色がマイケル・リーグの弾くフレットレスの弦楽器ともよく合い、作品全体に独特の温かい空気感をもたらす。

(1)「La Marinada」

グルーヴよりも旋律の美しさや、地中海沿岸のサウンドを取り入れた新しい表現を試みているという特徴から、スナーキー・パピー的な音を期待して聴くと見事に(良い意味で)裏切られるだろう。
だが、この音楽の先にまだ誰も聴いたことのない未知の音楽がありそうな、そんなワクワクも同時に感じさせてくれるはずだ。
これは音楽の進化の過程にあるべき、地味かもしれないが大きな可能性を秘めた作品だ。

Bill Laurance – piano, voice
Michael League – oud, fretless acoustic guitar bass, fretless baritone electric guitar, ngoni, voice

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