【連載】ネイティブ・タンの衝撃~⑥アフロセントリックに呼応したネイティブ・タンの始祖、ジャングル・ブラザーズ

「ニュースクール」の幕開けを高らかに宣言した伝説のクルー

HipHopにはクルーと呼ばれるチームが数多く存在する。古くはマーリーマール(Marley Marl)率いるザ・ジュース・クルー(The Juice Crew)から、ノトーリアス・B.I.G(Notorius B.I.G.)のジュニア・マフィア(Junior M.A.F.I.A)とトゥパック(2PAC)率いるアウトロウズ(Outlowz)は悲しい抗争を生み出した。あのエミネム(Eminem)も元々はD12というクルーのメンバーであるし、最近ではドレイク(Drake)を輩出したヤングマニー(Young Money)も記憶に新しいところだ。このようにHipHop史を語るうえで切り離すことの出来ない“クルー”の存在の中で一際異彩を放つのが、ネイティブ・タン(Native Tongue)である。

HipHopを変えたアフロセントリックというムーブメント

時は80年代後半。
アフリカン・ファーストを掲げるムーブメント「アフロセントリック」はファッションの分野を皮切りに、それらと密接に関わるHipHopにもまた大きな影響を与えていた。
スパイク・リーの映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』を始め、本作でもフィーチャーされているパブリック・エナミー(Public Enemy)やスピーチ(Speech)率いるアレステッド・ディベロップメント(Arrested Development)が台頭したのもまたこの流れと言える。

ネイティブ・タンの代表的な存在でもあり、ハウスを取り入れた音楽性にとかく注目が集まりがちなジャングル・ブラザーズ(Jungle Brothers)であるが、彼らもまたアフロ主義をメッセージに込めた「アフロセントリック」なアーティストであることを忘れてはならない。

映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』のオープニングで流れる、パブリック・エナミーの「ファイト・ザ・パワー」。

革新から実験へ。確固たる地位を築いたJ Beezが向かった新しい境地。

それでは音楽に目を向けるとどうだろうか。
ジャングル・ブラザーズと聞いて、真っ先に出てくるのはやはり1st『Straight Out the Jungle』である。上述したハウストラックを使ったHipHop『I’ll House You』、そしてSource誌で5本マイクを獲得と、華々しい功績を残す屈指のデビューアルバムであることに疑いの余地はない。また、並び称される2nd『Done by the Forces of Nature』もファンク界隈の大ネタサンプリングのオンパレード。デ・ラ・ソウル(De La Soul)、ATCQのQ-ティップ(Q-Tip)モニー・ラブ(Monie Love)クイーン・ラティファ(Queen Latifah)とネイティブ・タン一派が集結した「Doin’ Our Own Dang」と豪華な内容であった。

ネイティブ・タンオールスターズともいうべき豪華な「Doin’ Our Own Dang」

ただ、本稿では続く3rd『J Beez Wit the Remedy』にスポットを当てたい。
ファンクなトラックとニュースクール特有の「ゆるさ」を作り上げた2作から4年後の93年に発表された本作でまず真っ先に耳に飛び込んでくるのは、今までのJ Beezにはない音圧とベースラインの太さではないだろうか。HipHop黄金期の一つにも数えられる93〜94年HipHopのトーン&マナーにコミットしたトラックメイキングはやはりJ Beezが当時のHipHopのフロントランナーであったことを感じさせてくれる。Jazzy HipHopという観点では、続く4th『Raw Deluxe』で「Where You Wanna Go」「Brain」と言った素晴らしい楽曲があるものの、本作でもワッツ103rdストリート・リズム・バンド(The Watts 103rd Street Rhythm Band)の「A Dance, A Kiss And A Song」をサンプリングした「Good Looking Out」や、ザ・モーメンツ(The Moments)「I’VE GOT TO KEEP ON LOVING YOU」使いのシングルカット「My Jimmy Weighs A Ton」といったレアグルーヴ界隈の佳曲もあり、全体的なまとまりとビートの重厚感・高揚感では本作に軍配が上がる。

(3)「My Jimmy Weighs A Ton」

また、本作の後半では、より実験的なサウンドコラージュといった手法が取り入れられているのも特徴。後に出るDJ集団・エクスキューショナーズ(The X-Ecutioners)を思わせるビートの数々はHipHopファンのみならずとも耳にしておきたいサウンドアートだ。

商業的に失敗に終わったこともあり、現在でもサブスク音源では聴くことの出来ないJ Beezの3rd。気になった方は是非週末にレコードショップなどへ足を運んでみて欲しい。

サブスク未解禁だが、youtubeで視聴可能。

プロフィール

ジャズとヒップホップの融合を行った草分け的存在で、アフリカ主義的なリリックと革新的なビートによって評価され、程なくネイティブタン一派へ参加することになる。初期の3人のメンバーはマイク・G(Mike Gee, 本名Michael Small)、 アフリカ・ベイビー・バム(本名Nathaniel Hall)、DJサミー・B(本名Sammy Burwell)。サミー・Bは『Raw Deluxe』をリリースした後にグループを脱退。

1988年7月に発表したファーストアルバム『Straight Out the Jungle』のシングル曲『I’ll House You』はハウスミュージックとヒップホップを混ぜて作られたヒップ・ハウスというジャンルの中でも、シカゴシーンを除けば最初のレコードとして知られ、ヒップホップとダンスミュージック産業の生産方法を大きく変えるクラブヒットとなった。
wikipediaより抜粋)

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