国際派コラ奏者セク・ケイタ、BBCコンサート・オーケストラとの幽玄な共演『アフリカの狂詩曲』

Seckou Keita - African Rhapsodies

セク・ケイタとBBCオーケストラによる『アフリカの狂詩曲』

これまでに世界中の様々な分野のアーティストたちと共演し、コラという楽器の魅力を伝え続けてきたセネガル出身のコラ奏者/作曲家/歌手セク・ケイタ(Seckou Keita)の2023年の最新作 『African Rhapsodies』は、BBC(英国放送協会)の専属オーケストラであるBBCコンサート・オーケストラ(BBC Concert Orchestra)との共演というかつてない荘厳な作品となった。

セク・ケイタが作曲した曲を、2004年のセク・ケイタ・カルテット(SKQ)結成当時から活動を共にするイタリア出身のベーシスト、ダヴィデ・マントヴァーニ(Davide Mantovani)がオーケストラ用に編曲。BBCが誇る50人規模のオーケストラに加え、特別ゲストとして南アフリカのチェリスト、アベル・セラオコー(Abel Selaocoe)と、セク・ケイタの親族であるガンビアのコラ奏者/打楽器奏者スントウ・スッソ(Suntou Susso)とともに壮大な抒情詩“アフリカン・ラプソディー”を演じる。

オーケストラの演奏は素晴らしいが、あくまでもセク・ケイタのコラの引き立て役に徹している。この魔法のように美しい音色を持つ22弦の伝統楽器は西洋のオーケストラに溶け込むことなく常に独立して存在し、アフリカとヨーロッパの二つの世界の対話で重要な役割を果たす。(1)「The Future Strings Variation」はアフリカの王たるコラに、ヴァイオリンやホルンなど数多の西洋楽器が相対し会話をしているように聴こえる。それぞれの文化の誇りを胸に奏でられるアンサンブル。この冒頭曲からあまりに神々しく、本作のコンセプトの成功を予感させる。

(1)「The Future Strings Variation」

(2)「Simply Beautiful Miro」ではアベル・セラオコーのチェロと歌がフィーチュアされる。悠久の時の流れを感じさせるコラとオーケストラによって演出される音響空間に響くアベル・セラオコーの歌声はあまりに尊く美しい。

(2)「Simply Beautiful Miro」

(5)「Tamala’s Caravan Trail」は少し不思議な旋律が特徴的だ。
コラには伝統的な4つのチューニングがあるが、当時幼い娘の世話をしながら気まぐれにチューニングをしていて“発見”した独自のチューニングが用いられている。この最初の成果は2000年の彼のデビュー作『Mali』に収録の「Tamala」という曲で披露されているが、ここではそれをオーケストラ用にアレンジ。より洗練された形でコラの新しい可能性を提示してみせている。

“透明人間が残した影”という意味深なタイトルの(6)「The Shadow Left by the Invisible Man」。これはセク・ケイタが生後3ヶ月の頃に家を去り、のちに死亡が判明した彼の父親を影を追う物語だ。

Seckou Keita 略歴

コラ奏者のセク・ケイタ(Seckou Keita)はセネガル共和国南部のカマサンスに1978年に生まれた。名前が示す通り、父型は13世紀にマリ帝国を築いたスンジャタ・ケイタの子孫。そして母方は姓をシソコ(Cissokho)といい、世襲制の音楽家一族であるグリオの家系である。

叔父のコラ奏者ソロ・シソコ(Solo Cissokho)の指導のもと1996年から音楽活動を開始し、世界中をツアー。1998年にはカメルーンの人気バンド、バカ・ビヨンド(Baka Beyond)に打楽器奏者として参加、1999年に英国に居を移し2000年からはソロ活動を行なっている。これまでにサリフ・ケイタやユッスー・ンドゥールといった国際的な音楽家との共演、またインド音楽やラテン音楽などアフリカ文化を飛び越えたワールドワイドな活動でも知られている。

Seckou Keita – kora, voice

BBC Concert Orchestra :
Mark Heron – conductor

Guest soloists :
Abel Selaocoe – cello, voice
Davide Mantovani – double bass
Suntou Susso – percussion

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