スウィング、南米音楽、ポップスの融合の幸せは止まらない…スーパーバンド、ムッシュ・ペリネ新作

Monsieur Perine - Bolero Apocalíptico

Monsieur Perine さらに深化する4枚目『Bolero Apocalíptico』

コロンビア・ボゴタを拠点とするバンド、ムッシュ・ペリネ(Monsieur Perine)。2012年のデビュー曲「Suin Romanticón」ではエレガントで多幸感溢れる“コロンビア・スウィング”を提示し、日本でも猛プッシュされ大きな話題となった。大編成バンドでマヌーシュ・スウィングを独自に消化した彼らの音楽性は今聴いても最高にかっこよく、それ以来、私自身もコロンビアの音楽といえば彼らがひとつの基準になっていた感すらある。

デビューアルバム『Hecho a Mano』(2012年)収録の(3)「Suin Romanticón」

以来、彼らは数年おきにアルバムをリリースしてきたが、少なくともここ日本においては残念ながらデビュー作ほどの話題にはならず、メディアでの露出も減ってしまってきた。2023年の5月、ムッシュ・ペリネは2018年の3rdアルバム『Encanto Tropical』以来5年ぶりとなる4thアルバム『Bolero Apocalíptico』をリリースしたが、日本語での発信は皆無で、気づいている人はほぼ居なそうな状況だ。

不確実の時代に生き残るためのボレロ

デビュー作でのメンバーのほとんどが脱退し、今作『Bolero Apocalíptico』のジャケットに写るのは創立当初からの中心メンバーであるヴォーカルのカタリナ・ガルシア(Catalina García)とマルチ弦楽器奏者のサンティアゴ・プリエト(Santiago Prieto)だけになってしまったが、全12曲のサウンドはムッシュ・ペリネらしさを失わず、さらに彼らの個性を進化させた洗練された音楽となっている。

(1)「Prométeme」(約束して)はここ数年間の世界のもっとも重要な出来事を深く憂い、それに抵抗する楽曲といえる。
MVでは、最後の夜を過ごすカップルが海から広がる瘴気のようなものと闘う物語を描いている。このイメージが現実となり得るディストピアのヴィジョンであることを人類はこの数年間で認識したが、それを乗り越えることができるのは“愛”だけなのだと説く。

(1)「Prométeme」のMV

約束して
世界が終わっても
川の水が汚染された海に達しても
プラスチックの中で泳いでも
あなたの傍にいると

「Prométeme」

(1)「Prométeme」のMVではコロンビア・ボゴタ近郊の川で実際に発生した得体の知れない有毒な泡が映像に収められている。環境汚染は深刻な問題だ。感染症にも、戦争にも大きな懸念がある。そんな状況なのに、TikTokで次に再生されるコンテンツは能天気なダンスだ──「それはほとんどジョークのようだ」とカタリナ・ガルシアは語っている

(8)「Cumbia Valiente」

(6)「La Pea」ではコロンビアの伝統音楽であるジョロポを掘り下げる。
歌詞では失恋の痛みを歌い、それを忘れるために浴びるように飲む酒を、自身に都合の悪いことを忘却するという人間の根源的欲求への皮肉として喩えている。

(6)「La Pea」

「パンデミックの最中で、世界はさらに崩壊した」とカタリナは危機感を示す
サルサやボレロ、フラメンコにボサノヴァ、R&Bやジャズと益々広がりを見せるサウンドに乗せて、混沌の中での愛の重要性を説く。これは彼女たちのパンデミック禍での精神的な深化を証明する作品でもある。

レトロなスウィングと現代的なポップセンスを兼ね備えた(2)「Volverte a Ver」
Monsieur Perine - Bolero Apocalíptico
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