国籍もジャンルも超越する個性派ドラマー、ジョン・ハドフィールド新譜『Drum of Stories』

John Hadfield - Drum of Stories

ジョン・ハドフィールド、最高のトリオ+αで描く新譜

米国出身のドラマー/パーカッション奏者ジョン・ハドフィールド(John Hadfield)が、グレゴリー・プリヴァ(Grégory Privat, p)、クリス・ジェニングス(Chris Jennings, b)というパリのジャズシーンで最高峰の二人を迎え、新作『Drum of Stories』をリリースした。

アルバムのタイトルには楽器が持つ物語への想いが込められている。
ジョン・ハドフィールドは2022年、伝説的な打楽器奏者であるナナ・ヴァスコンセロス(Naná Vasconcelos, 1944 – 2016)とコリン・ウォルコット(Collin Walcott, 1945 – 1984)がかつて所有していた打楽器をいくつか入手したという。ジョンは彼らの楽器を手にすることで、これらの楽器が過去に生み出した音楽を追体験し、楽器たちが語る物語を容易に想像することができた。楽器たちの過去に敬意を表しながら新しい役割を与えることが現代に生きる音楽家としての彼の使命だった。

シリア出身のクラリネット奏者、キナン・アズメ(Kinan Azmeh)をゲストに迎えた(1)「Old World New」

コリン・ウォルコットの大きなフィールド・ドラムと、ナナ・ヴァスコンセロスの様々な金物楽器を自らのドラムセットに組み込んだ彼による新しいジャズの表現は、実に色彩豊かで活き活きとしている。(2)「Tower of Liars」や(3)「Spells」でみられる複雑怪奇なリズムもそうとは感じさせない自然さで演奏され、まるで常に降りかかる無理難題を遇らう巧さが試される人生というゲームのようだ。後者はイラン出身のギタリストのマハン・ミララブ(Mahan Mirarab)が参加し、トレードマークのフレッテッド/フレットレスのダブルネックのエレクトリック・ギターを駆使した演奏を聴かせてくれる。

マハン・ミララブのダブルネックのギターがフィーチュアされた(3)「Spells」

(4)「Map of the Future」には環境保護を世界に広く訴える当時15歳のグレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)の有名な演説がサンプリングされている。ジョン・ハドフィールドはここでは数々のパーカッションを用い空間を演出。グレタ・トゥーンベリの演説は3分半ほどで終わるが、以降余韻を噛み締めるようにグレゴリー・プリヴァの静謐なピアノが主導する音響空間が続いていく。

(7)「Stolen from the 10th Arrondissement」には米国のサックス奏者ロン・ブレイク(Ron Blake)が参加。力強く明瞭なリズムと演奏は、過去から繋がる未来への切実な希望だ。

ジャンルも国境も越える打楽器奏者、John Hadfield 略歴

ジョン・ハドフィールド(John Hadfield)はアメリカ合衆国ミズーリ州生まれの打楽器奏者。幼少期からドラムを叩き始め、学部生としてネバダ大学ラスベガス校で音楽を学び、その後ミズーリ大学カンザスシティ音楽院で修士号を取得した。その後はニューヨークでジャズ、ワールドミュージック、現代音楽などジャンルや国境を越えた多彩な活動を行なっている。

これまでの共演者はヨーヨー・マ(Yo-Yo Ma)、キナン・アズメ(Kinan Azmeh)、ペトロス・クランパニス(Petros Klampanis)など。彼のドラムセットには伝統的なジャズドラムセットのほか、インド古典打楽器のカンジーラ、アフリカのカリンバ、自転車の車輪、金属片、ダクト管など多様な楽器が並んでいる。

John Hadfield – drums, percussion, synth
Grégory Privat – piano, electric piano
Chris Jennings – bass

Featuring :
Kinan Azmeh – clarinet (1)
Mahan Mirarab – guitar (3)
Ron Blake – saxophones (7)

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