アミルトン・ヂ・オランダによるジャヴァン曲集
ブラジルのバンドリン奏者アミルトン・ヂ・オランダ(Hamilton de Holanda)による最高にグルーヴィーで独創的なジャヴァン曲集『Samurai』をリリースした。アルバムにはMPB(ブラジルのポピュラー・ミュージック)の生きる伝説ジャヴァン(Djavan)本人を含む豪華すぎるゲストも参加し、ジャヴァンの名曲たちを新鮮なアプローチのアレンジで演奏している。
ジャヴァンはこの天才バンドリン奏者にとって、特別な思い入れのあるアーティストだったという。
一つ目はアミルトンが10代の頃に友人たちとのバンドでの主力なレパートリーが(11)「Sina」だったこと。そして二つ目は、ジャヴァンの2004年作『Vaidade』にバンドリン奏者として参加し、タイトル曲含む数曲で演奏したこと。アミルトンにとってジャヴァンは音楽への扉を開いた最初の偉大なアーティストのひとりであり、いつかジャヴァンの曲集を作りたいと思っていたそうだ。
今作にはブラジル国内からはジャヴァン(Djavan)本人がヴォーカルで(6)「Luz」と(9)「Lambada de Serpente」に参加しているほか、サンバの巨匠ゼカ・パゴヂーニョ(Zeca Pagodinho)が(4)「Flor de Lis」に、ドラァグクイーンの人気歌手グロリア・グルーヴ(Gloria Groove)が(12)「Samurai」に、ほかにも現代ブラジル音楽を代表する鍵盤奏者のサロマォン・ソアレス(Salomão Soares)、サンパウロの音楽シーンを牽引し本作でもジャケット写真の撮影やヴィジュアル・ディレクターを務める歌手ダニ・グルジェル(Dani Gurgel)とその夫でドラマーのチアゴ・ハベーロ(Thiago Rabello)などが参加。
国外からも素晴らしい音楽家たちをゲストで招いている。
(3)「Oceano」ではインド出身の歌手ヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル(Varijashree Venugopal)をフィーチュア。アミルトンの2021年作『Maxixe Samba Groove』でも素晴らしい歌声を披露していた彼女の参加は、原曲にも取り入れられていたインド音楽のエッセンスを増幅させる。
(5)「Irmã de Neon」キューバのピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバ(Gonzalo Rubalcaba)が参加しラテンのリズムでアミルトンのバンドリンとのソロの応酬を聴かせてくれる。(10)「Lilás」ではウルグアイを代表するSSWホルヘ・ドレクスレル(Jorge Drexler)がヴォーカルを担当。
ジャヴァンを代表する名曲(12)「Samurai」(原曲にはスティーヴィー・ワンダーも参加した)には米国の女性サックス奏者レイクシア・ベンジャミン(Lakecia Benjamin)が参加し後半で素晴らしいソロを吹いている。
ジャヴァンの数多くの名曲に新たな視点をもたらす、素晴らしいアレンジとバンドリンを中心とする卓越した演奏が収録された本作。MPBを世界に発信した偉大なアーティストへの敬意が、現在のブラジル音楽を先導する最高峰の音楽家によって最もクリエイティヴな形で表れたアルバムだ。
Hamilton de Holanda 略歴
アミルトン・ヂ・オランダは1976年ブラジル・リオデジャネイロ生まれのバンドリン奏者/作曲家。
音楽一家に生まれ、読み書きよりも先に祖父から贈られたバンドリンを弾き始めた彼は1982年、6歳のときにプロとしてのキャリアを開始し、何百万人もの視聴者を抱える国営テレビ番組「Fantástico」にバンドリンの天才として出演した。以降、ブラジルの伝統的なショーロにとどまらず、ジャズなどさまざまなジャンルの音楽の要素を貪欲に取り入れ、とりわけその超絶的な演奏技巧でたくさんのファンを楽しませ続けている。
2000年より、伝統的には8弦4コースのバンドリンを低音側に2弦を追加し10弦5コースでの演奏を始める。これはバンドリンにより深い音を与え、伝統的なジャンルから解放し、後進の奏者たちにも10弦の新しい楽器を普及させる革命的な出来事となった。
多作家としても知られている。パンデミックの2020年には1日1曲を作っていたら1年に366曲ができた。彼には常に音楽を作りたいという欲求があり、仮に今、曲を書くことをやめたとしても残りの人生はそれらの曲を録音することで埋まってしまうだろうと語る。これまでに50枚近いアルバムに録音を残しており、InstagramなどのSNSでもいつも楽しそうに音楽を発信している。
これまでにエグベルト・ジスモンチ、エルメート・パスコアール、イヴァン・リンス、ミルトン・ナシメント、ドミンギーニョスといった数えきれないほどのブラジル国内ミュージシャンは勿論のこと、ウィントン・マルサリス、チック・コリア、ジュシュア・レッドマン、チューチョ・バルデス、ンドゥドゥーゾ・マカティニといった国外のミュージシャンとも多数の共演を行なってきている。バンドリンという楽器をブラジル音楽の範囲外にも拡張した先駆者とも言えるだろう。
Hamilton de Holanda – bandolim, electric guitar (2), acoustic guitar (3), chorus (1, 2, 10)
Salomão Soares – keyboards
Thiago Rabello – drums, programming
André Vasconcellos – bass, electric guitar (10), acoustic guitar (3)
André Siqueira – percussion (4, 5, 11)
Armando Marçal – percussion (except 1)
Dani Gurgel – chorus (1, 2, 10)
Guests :
Djavan – vocal (6, 9)
Varijashree Venugopal – vocal (3)
Zeca Pagodinho – vocal (4)
Gonzalo Rubalcaba – piano (5)
Jorge Drexler – vocal (10)
Gloria Groove – vocal (12)
Lakecia Benjamin – alto saxophone (12)
Tallinn Studio Orchestra :
Kleber Augusto – conductor
1st Violon :
Egert Leinsaar
Piret Sandberg
Tarmo Truuväärt
Astrid Muhel
Helen Västrik
Mari-Liis Uibo
2nd Violin :
Kadi Vilu
Kristjan Nõlvak
Kristel Kiik
Maiu Mägi
Triin Krigul
Jevgenia Gulman
Viola :
Rain Vilu
Oliver Vilu
Martti Mägi
Joosep Ahun
Helena Altmanis
Julia Širokova
Cello :
Tõnu Jõesaar
Andreas Lend
Kristian Plink
Aleksander Sebastian Lattikas
Contrabass :
Janel Altroff
Indrek Pajus