『ENO PIANO』:ブライアン・イーノがスタジオで構築した「アンビエント・ミュージック」の世界をピアノソロで表現。稀代の米国人ピアニスト、ブルース・ブルベイカー (Bruce Brubaker)による新作。

 アカデミックとジャズ、ポスト・ミニマリズムを代表する存在であるNY在住のピアニスト、ブルース・ブルベイカー (Bruce Brubaker)。ピッチフォークが「現代のアメリカン・クラシック・シーンで最もエキサイティングなピアニストのひとり」と評した人物だ。
 2015年に仏InFinéから、ミニマル音楽の父「フィリップ・グラス(Philip Glass)」の名盤『Metamophosis』を全編ピアノでカバーしたアルバム『Glass Piano』をリリースし高い評価を得たが、その姉妹作とも言えるアルバムが同じく仏InFinéから、今月発表された。タイトルは『Eno Piano』。そう、タイトルから連想できるように、今度は、「ambient music|アンビエント・ミュージック」を定義したブライアン・イーノ(Brian Eno)の作品をピアノで表現します。ブライアン・イーノ展「BRIAN ENO AMBIENT KYOTO」が、今年の6月から8月に、京都で、行われたのも記憶に新しい。

 本作で取り上げたのは、「Music for Airports」を含む、ブライアン・イーノの代表的なアンビエント・ミュージック6曲。(試聴リンクの後ろに本文続く)

▶︎Track 1 「Music for Airports, 1/1」music by Brian Eno, Rhett Davies, Robert Wyatt.
▶︎Track 2 「Music for Airports, 2/1」 music by Brian Eno
▶︎Track 3 「The Chill Air」 music by Brian Eno, Harold Budd
▶︎Track 4 「By This River」music by Brian Eno, Dieter Moebius, Hans-Joachim Rodelius
▶︎Track 5 「Music for Airports, 2/2」music by Brian Eno
▶︎Track 6 「Emerald and Stone」music by Brian Eno, Jon Hopkins, Leo Abrahams


ブルース・ブルベイカー (Bruce Brubaker)

 スタジオのテクニックやテープループを使って作られたブライアン・イーノのアンビエント音楽を、単一の楽器で表現できるでしょうか?「スタジオは楽器である」とブライアン・イーノは言いましたが、ブルース・ブルベイカーは「楽器はスタジオになり得る」と言います。本作『Eno Piano』で、ひとつの楽器がスタジオと同等になり得ることを示しています。

 ブライアン・イーノの音楽は、20世紀にフィリップ・グラスやテリー・ライリー(Terry Riley)らが実践した反復に基づく音楽的ミニマリズムの重要な一翼を担っています。
 1971年に、フィリップ・グラスが、ロンドンの王立美術大学で演奏した際に、客席に23歳の2人の若者がいました。デヴィッド・ボウイとブライアン・イーノでした。フィリップ・グラスの音楽は、ブライアン・イーノの音楽観に大きな影響を与えました。デヴィッド・ボウイとブライアン・イーノは1970年代初頭のグラスの音楽の影響を受け1970年代後半にアルバム”ベルリン3部作”を録音しています(※ロウ “Low”(1976年9月~11月)|ヒーローズ “Heroes”(1977年7月~8月)|ロジャー(間借人) “Lodger”(1978年9月~79年3月)|また、”ベルリン3部作”を基にフィリップ・グラスは3曲の交響曲を録音しました)。『ENO PIANO』を通じて、ブライアン・イーノとフィリップ・グラスの芸術的な深い絆を確認することもできるでしょう。
 ブライアン・イーノは、「Ambient Music(アンビエント・ミュージック)」という新しいジャンルを定義しました。

 ブライアン・イーノは、ケルン・ボン空港で何時間も飛行機を待っているうちに、空港の無機質な雰囲気に苛立ちを覚えました。その時、ブライアン・イーノは、「空港のためにデザインされた」音楽のアルバムを構想しました。ブライアン・イーノは、1978年の『Ambient 1 : Music for Airports』でこう説明していました。

従来のバックグラウンドミュージックが、音楽からすべての疑いと不確実性の感覚(そしてすべての本物の面白み)をはぎ取ることによって生産されるのに対し、《アンビエント・ミュージック》はそれらの性質を保ち続ける。《アンビエント・ミュージック》は、特に人を強いることなしに、多様な聴取のレベルらを受けいれることが可能でなければならない。それは興味深く、しかも無視することが可能なものでなければならない。

Bruce Brubaker プロフィール

 1959年2月1日、アメリカ合衆国 アイオワ州生まれ。ジュリアード音楽院卒業。ソロ・ピアノ録音は Philip Glass、John Adams、Alvin Curran、William Duckworth、Meredith Monk、Nico Muhly、John Cageなどを録音し、アメリカ音楽を網羅している。ジュリアード音楽院、ニューイングランド音楽院、ドレイク大学などで後進の指導も行なっている。

こちらは『Glass Piano』

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