バルセロナの名歌手アルバ・カルモナ、“歌う”ことの意味を問う新作『Cantora』

Alba Carmona - Cantora

Las Migas出身歌手アルバ・カルモナの新譜『Cantora』

スペイン・バルセロナのシンガーソングライター/歌手アルバ・カルモナ(Alba Carmona)。伝統的なフラメンコ歌手としての教育を受け、人気歌手シルビア・ペレス・クルス(Sílvia Pérez Cruz)が初期のキャリアを築いたヴォーカル・グループであるラス・ミガス(Las Migas)にシルビア脱退後の2011年に加入し2018年まで在籍した彼女のソロとしては2ndアルバムとなる『Cantora』は、フラメンコを基調とした超良質な作品だ。

収録された9つの楽曲はそれぞれ異なる趣向を持ち、スペインだけでなくラテン・アメリカに至るさまざまなルーツ・ミュージックや民俗文化への彼女の深い敬愛を湛えたものとなっている。そして圧倒的な存在感を放つのはやはりアルバ・カルモナ自身の声だ。激しい愛情や悲哀の滲む表現力豊かなヴォーカルはフラメンコの伝統に則りつつも特有のメリスマ(“こぶし”のような歌い方)はそれほど強烈ではなく、質の高いポピュラー音楽として充分に聴けるものだ。このあたりはさすが、Las Migasの出身といったところか。

バックのサウンドの中心は前作『Alba Carmona』と同様、公私のパートナーであるフラメンコ・ギタリストのヘスス・ゲレーロ(Jesús Guerrero)の卓越したギターを中心に、デジタルも含め細やかなアレンジが施されている。フラメンコのかっこよさを凝縮したギターはこの作品の聴きどころのひとつだろう。

(1)「Yo Canto」は、歌うことによる癒し、喜びを起点に“歌う”ことの意味を問う

楽曲自体も魅力的なものばかり。多くはアルバ・カルモナによる作詞作曲、あるいは夫ヘスス・ゲレーロとの共作。
特に前半の3曲はどれも素晴らしく、このアルバムを傑作と確信させるに相応しい出来栄えだ。“歌う”ことの意味を自問自答するような(1)「Yo Canto」はフラメンコとレゲエが混ざったような独特のアレンジが秀逸。(2)「Malhería」はパコ・デ・ルシア(Paco de Lucía)以降のジャズ・フラメンコの流れを汲んでおり、複雑な高速の12拍子のグルーヴが心地いい。印象的なベースを弾いているのは名手ホセ・マヌエル・ポサダ(Jose Manuel Posada)。

(2)「Malhería」のショート・ヴィデオ。

(3)「Indiesito」は美しいメロディーとサウンドをもつバラード。アルバムをここまで通して聴いてきたなら、あなたはもうアルバ・カルモナの虜になっているはずだ──。

(5)「Cu Ti Lu Dissi」はイタリア・シチリア島の名歌手ローザ・バリストレーリ(Rosa Balistreri, 1927 – 1990)のカヴァーで、古典的な短調のワルツを原語シチリア語のまま現代に甦らせている。続く(6)「La Bruja」はメキシコの伝統歌。

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