現代ジャズ・ヴィブラフォンの最高峰が楽しめるシモン・ムリエ新作
フランス出身の気鋭ジャズ・ヴィブラフォン奏者シモン・ムリエ(Simon Moullier)が気心知れたトリオで録音した新作アルバム『Inception』。所謂ジャズメン・オリジナルのカヴァーをメインに、持ち前の超絶技巧で疾走感のあるジャズを聴かせてくれる快作だ。
収録曲はホレス・シルヴァー(Horace Silver)の(1)「Ecaroh」に始まり、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)の(2)「Inception」、ビリー・ストレイホーン(Billy Strayhorn)の(5)「Lush Life」、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)の(6)「Pfrancing」など通好みの選曲。有名どころではジョビン(Antônio Carlos Jobim)の(3)「Desafinado」、そして同郷ミシェル・ルグラン(Michel Legrand)の(8)「You Must Believe in Spring」も素晴らしい。ラストの(9)「RC」のみ、シモン・ムリエのオリジナルとなっている。
全曲がヴィブラフォン、ベース、ドラムスのトリオで演奏される。
メンバーはデビュー当時からバンドを組む韓国出身のドラマー、キム・ジョングク(Jongkuk Kim)とイタリア出身のベーシスト、ルカ・アレマンノ(Luca Alemanno)。2人の盤石のサポートを得て、唸りながら叩きまくるシモン・ムリエのヴィブラフォンが最高だ。
Simon Moullier 略歴
シモン・ムリエは1994年フランス・パリ生まれ。クラシック音楽とジャズの経験を積んだマルチパーカッショニストとして、米国ボストンのバークリー音楽大学を経て現在はNYのブルックリンを拠点に活動している。
ロサンゼルスのセロニアスモンク・ジャズ・インスティテュートでハービー・ハンコックに師事。さらにハバナ国際ジャズフェスティバルではクインシー・ジョーンズに見出された。
2020年にアルバム『Spirit Song』でデビュー。
grammy.comによる2023年の「注目すべき新進ジャズ・アーティスト10選」にも選出されるなど、世界中から優れた才能の集まるジャズの中心地ニューヨークで今もっとも注目されているヴィブラフォン奏者である。
Simon Moullier – vibraphone
Luca Alemanno – bass
Jongkuk Kim – drums