土着音楽とジャズの見事な融合。カロル・パネッシ新譜
エルメート・パスコアールやイチベレ・ズヴァルギとの関係も深いブラジル・リオデジャネイロ出身のマルチ奏者/シンガー/作曲家のカロル・パネッシ(Carol Panesi)が5枚目のスタジオ・アルバム『Natureza é Casa』をリリースした。クラシックやジャズをも内包したブラジル音楽の豊かさを実感する作品に仕上がっている。
カロル・パネッシはこれまでの彼女の作品と同様に主にヴァイオリンを演奏。曲によってはピアノや笛、ヴォーカルも担い、その多才さを惜しげもなく披露する。バンドには過去にデュオ作もリリースしたギタリストのファビオ・レアル(Fábio Leal)や、イチベレ・ズヴァルギの息子で打楽器奏者のアジュリナ・ズヴァルギ(Ajurinã Zwarg)をコアメンバーとし、多様なゲストも参加。ブラジルらしい色彩感の豊かな音楽をともに創り上げてゆく。
アルバムにはペルナンブーコの先住民族であるエドゥアルド・フリジワ・フルニ=オー(Eduardo Flydjwa Fulni -ô)や、サンパウロの弦楽四重奏団なども参加。明らかに土着的な音楽がコンセプトやサウンド自体の軸になっているものの、ジャズやクラシック音楽に由来する洗練された要素によって聴きやすく纏められている。それがあざとさを伴うものではなく、彼女の天性の才能によるものだと感じさせるところも素晴らしい。
各楽曲のコンポージング、アレンジ、そしてブラジル屈指とも言える卓越したアンサンブル。すべてが魅力的だ。
Carol Panesi 略歴
カロル・パネッシはブラジル・リオデジャネイロ出身。父は家でよくアントニオ・カルロス・ジョビンの曲をギターで弾き語っていたという。当初よりジャズやブラジル音楽に影響を受け、11歳の頃からピアノを始め、じきにベルナルド・ベスラー(Bernardo Bessler)に師事しヴァイオリンを始めた。
ブラジル音楽院(Conservatório Brasileiro de Música, CBM)で長い経験を積んだ彼女はそこでエルメート・パスコアルのバンドのベーシストで、ワークショップを主宰するイチベレ・ズヴァルギ(Itiberé Zwarg)と出会い、彼の楽団イチベレ・オルケストラ・ファミリア(Itibere Orquestra Familia)に13年在籍することになる。
2018年のデビュー作『Primeiras Impressões』ではエルメート・パスコアール(Hermeto Pascoal)と共演。パスコアールやイチベレ・ズヴァルギの影響は今も彼女の音楽に強い影響を与えている。同年、プロフェッショナル・ミュージック・アワードとMIMOインストゥルメンタル・アワードを受賞。名実ともにブラジル音楽の伝統とこれからの進化を担っていくアーティストとなっている。
Carol Panesi – violin, piano, rabeca, flutes, voice
Fábio Leal – nylon string guitar, electric guitar, viola caipira
Ajurinã Zwarg – drums, percussion
Quarteto de Cordas da Cidade de São Paulo :
Betina Stegmann – violin
Nelson Rios – violin
Marcelo Jaffé – viola
Rafael Cesario – cello