野心に満ちた究極的ブラス・オクテット、Brassology アレンジの妙技を楽しめる逸品

Brassology

マーシャル・ギルクスとブランドン・リドヌールが率いるブラスバンド

カナダで活躍するトランペッター、ブランドン・リドヌール(Brandon Ridenour)とWDRビッグバンドでの活動で世界的に知られるトロンボーン奏者マーシャル・ギルクス(Marshall Gilkes)。ともにジャズやクラシックといったジャンルの概念に捉われない音楽を探求し、ブラスの限界点を拡張しようとする2人が結成した新しいブラス・オクテット、ブラソロジー(Brassology)のアルバム『Brassology』
金管楽器のみ8人の編成で、非常によく練られていながらも挑戦的な音楽表現が新鮮なアルバムだ。

アルバムの冒頭(1) 「848 Soundcheck」は8人で8つのコードを提示するというブランドン・リドヌールのアイディアから生まれた楽曲で、実験的で複雑な和音の動きは美しく激しく、いきなりの衝撃的な幕開け。続くマーシャル・ギルケス作曲の(2)「New Horizons Fanfare」はタイトル通りのワクワクするような楽曲とアレンジで、新たな冒険の旅を祝福する。

超絶技巧の小品(3)「Hell’s Bells」を挟み、ブラームスの交響曲第3番からの著名なメロディーをアレンジした(4)「Brahms 3/3/3」は今作のひとつのハイライト。古典的なメロディーをジャズのコードで彩り、緻密なアンサンブルの上でソリストは自由にアドリブを吹く。現代的なブラスバンドのアレンジの妙技を堪能できる曲だ。

ブラームスの交響曲第3番を元にアレンジした(4)「Brahms 3/3/3」

(5)「Transcendental Etude #10 Allegro Agitato Molto」はフランツ・リスト「超絶技巧練習曲 第10番」の再解釈。もともとはこのバンドのトランペット奏者クリス・コレッティ(Chris Coletti)が編曲したもので、彼は何年も前に金管八重奏のためにこのアレンジを書いたが、あまりに難解だったためかたった一度しか演奏されなかったという。今作ではそれを元にバストロンボーンのパートをユーフォニアムのために調整し、驚くべき表現力を備えた楽曲として仕上げた。

マーシャル・ギルケス作の(10)「Bedtime Fables」も美しいバラードだ。彼の息子のイーサンと娘のコーラは幼い頃、いつも彼にベッドタイム・ストーリーをねだっていた。そのことを思い出しながら書かれた曲で、起承転結のある構成が彼の感性の美しさを示している。

(8)「Can Ya Feel」

このアルバムは8人の音をそれぞれ聴き分け、そのユニークな編曲の秘密を紐解きたくなる。じっくりと聴くには最高だし、研究のしがいもある。ブラスアレンジの最高のお手本になる作品だ。

Brandon Ridenour – trumpet, flugelhorn
Chris Coletti – trumpet, piccolo trumpet, flugelhorn
Michael Rodriguez – trumpet, flugelhorn
Eric Reed – horn
Marshall Gilkes – trombone
Tim Albright – trombone
Demondrae Thurman – euphonium 
Carol Jantsch – tuba

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