エミル・アフラスィヤブ新リリース『Ömrün Səhifələri』
現在のアゼルバイジャン・ジャズを代表するピアニストであるエミル・アフラスィヤブ(Emil Afrasiyab)が、ライヴ録音作『Ömrün Səhifələri』をリリースした。ソロからバンド編成までバリエーション豊かなムガームジャズを楽しめる貴重な作品だ。
エミル・アフラスィヤブというピアニストは、その実力からしてアゼルバイジャンの現行ジャズシーン屈指の存在だと思うが、とにかく録音物が少ない。サブスクで配信されているフルレンス・アルバムでは『Friends’ Concert』(2013年)と今回のアルバムのみで、スタジオ録音盤もまったく見当たらない状況だ。それでも彼のピアノはなんとかして聴きたいと思わせる独特の魅力があり、今作はそうした欲求不満を僅かにでも解消してくれるものだ。
はっきり言って、録音の質は良くない。それでもライヴコンサートならではの臨場感溢れるムガームジャズの演奏がエキサイティングな一枚だ。いずれの曲もアゼルバイジャンの作曲家の作品を取り上げており、ソロピアノで演奏されるフィクレト・エミロフ(Fikret Emirov, 1922 – 1984)作の(1)「Ömrün Səhifələri」や、ラミズ・ミリシュリ(Ramiz Mirişli, 1934 – 2015)作のムガーム要素強めの(3)「Muğamsayağı」、ムガームジャズ史上の最重要人物のひとりラフィク・ババーエフ(Rafiq Babayev, 1937 – 1994)の(8)「Qoca Dəyirmançı」といった楽曲群の演奏は、アメリカとも西洋とも異なるジャズのまだあまり知られていない地平で魅惑の輝きを見せている。
Emil Afrasiyab 略歴
エミール・アフラスィヤブは1982年バクー生まれのピアニスト/作曲家/音楽プロデューサー。3歳でピアノで始め、13歳の頃からジャズの演奏を始めた。2000年から2006年にかけてバクー音楽アカデミーのピアノ学部で学んだ。
2011年にモントルー・ジャズフェスティバルでオーディエンス賞を受賞。2012年に米国に向かい、ボストンの名門バークリー音楽大学で学びを深めた。
クラシックからジャズ、ゴスペルまで活動領域は広く、2011年にはアゼルバイジャンの名誉芸術家に選ばれた。