マーク・ジュリアナがたった一人で作り上げた音楽の世界『MARK』
米国を代表するドラマー、マーク・ジュリアナ(Mark Guiliana)の新作、その名も『MARK』は、彼の独創的な音楽観を堪能できる作品となった。今作で彼はドラムスやパーカッションだけでなくピアノやシンセ、マリンバやヴィブラフォン、エレクトロニックにスポークン・ワードといったあらゆる表現手段をすべて自ら手がけている。
冒頭の(1)「Just Listen」はさまざまな打楽器を用いたアフロ・スピリチュアルなグルーヴが魅力的なトラックで、プリミティヴな三拍子系の前半部と、内省的にすら聴こえる5拍子系の後半部との対比が面白い。
次に提示される(2)「Kamakura」は鍵盤打楽器の多重録音アンサンブルを中心とし、彼の普段の楽器だけでは表現することが難しい“ハーモニー”の領域へと彼の世界を拡げる。
(3)「Hero Soup」ではリズムもハーモニーも、そしてエレクトロニックも大胆に組み合わせたサウンドが展開され、マーク・ジュリアナが“ジャズ・ドラマー”という枠には収まりきらない存在だということに気付かされるだろう。
即興アンサンブルで他者とのインタープレイによって楽曲をリアルタイムに構築していくことに定評のあるマーク・ジュリアナだが、今作はそうした即興音楽家の姿とはまったく異なる一面が強く表れた作品だ。根っからの音楽家だけが表現し得る世界、とも言えるだろう。
Mark Guiliana プロフィール
1980年、アメリカ合衆国ニュージャージー州生まれの独創的なドラマーであるマーク・ジュリアナは、古典的なアコースティック・ジャズ、革新的なエレクトロニック・ミュージック、またはネクストレベルのロックを演奏するドラマーとして常にその動向が注目されている。
これまでに様々なプロジェクトに参加しており、その度に大きな話題を呼んできた現代ジャズ・ドラマーの最重要人物だ。イスラエル出身のベーシスト、アヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)のトリオへの参加や、ピアニストのブラッド・メルドー(Brad Mehldau)とのエレクトリック・デュオ『Mehliana』、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)の遺作となった『★(Blackstar)』への参加、そしてアゼルバイジャンの新進気鋭のピアニスト/作曲家イスファール・サラブスキ(Isfar Sarabski)との共演などその活動領域は幅広い。
妻はジャズ・ヴォーカリストのグレッチェン・パーラト(Gretchen Parlato)。
Mark Guiliana – drums, cymbals, percussion, piano, vibraphone, marimba, celeste, pump organ, Mellotron, Jupiter-8, electronics, drum programming, spoken word