6ヵ国で育った気鋭ギタリスト、シュブ・サラン。今も探し続けるアイデンティティー

Shubh Saran - Being Anybody Else

NYで活躍するインド人ギタリスト、シュブ・サラン新作EP

インド出身、現在はニューヨークを拠点に活動する作曲家/ギタリストのシュブ・サラン(Shubh Saran)が新作EP『Being Anybody Else』をリリースした。
外交官の息子として各国を転々として多様な文化の中で育ちグローバルな感覚を身につけると同時に、それはつまり逆説的に彼の帰属意識を希薄にしており、“アイデンティティの探求”はこれまでの彼の作品における重要なテーマでもあった。今回の作品は各メディアから絶賛された前作『Inglish』のささやかな続編とも言える内容で、楽曲のタイトルにも彼がいまだに自己探究の途上でその心を浮き沈みさせている様が垣間見える。

(1)「To Be」

楽曲は激しく、ギターロックを軸にしながらジャズ/フュージョンやメタルを取り入れ、従来作よりもヘヴィーな展開が多くなった印象を受ける。前作ほどアジアやインド的な神秘性を感じさせない音楽となったのは少し寂しいポイントのように感じられるかもしれないが、フレーズの端々には今もなお強烈な個性があり、そしてそれはとても力強く響く。

(4)「I Am Nothing」

Shubh Saran 略歴

シュブ・サランはニューヨークを拠点とするバングラデシュ生まれのギタリスト兼作曲家。インドの外交官の息子として幼少期からインド、エジプト、スイス、カナダなどを転々とし、それぞれの文化から影響を受けて育ってきた。インドのデリーでは小学生・高校生の数年間を過ごしており、両親がデリーに住んでいるため今でも年に1回は帰るといい、本人は「デリー出身」と語っている。

初めてギターを手にしたのはスイスのジュネーヴに住んでいた頃で、当時はアメリカやヨーロッパのロックをよく聴いていたという。その頃、クラシックギターも1年間ほど学んだ。
2010年にボストンのバークリー音楽大学に入学。2014年にニューヨークに拠点を移し、ソロアーティストやサイドマンとして幅広く活動している。

彼の複雑な作品は、モダンジャズ、ネオソウル、ロック、さらにはインドの古典音楽や現代音楽を融合している。2017年に『Hmayra』でデビューし、2019年後半にEP『Becoming』をリリース。パンデミックによるロックダウンの中で『Inglish』の制作に着手し2021年にリリースした。

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