個性的かつ創造的な一大叙事詩。マリア・ジョアン&アンドレ・メマーリ 稀代の音楽家のデュオ作

Maria João & André Mehmari - Algodão

マリア・ジョアン&アンドレ・メマーリ、初デュオ作『Algodão』

ポルトガルの鬼才歌手マリア・ジョアン(Maria João)と、ブラジルの天才ピアニスト/作曲家アンドレ・メマーリ(André Mehmari)の共演作『Algodão』が登場した。二人の卓越した表現力により、極めてアーティスティックな大傑作といって過言ではないだろう。

二人のアルバムでの共演はメマーリとSSWレアンドロ・マイア(Leandro Maia)の共作の名盤『Suíte Maria Bonita e Outras Veredas』(2014年)でマリアが2曲に参加して以来。その作品でも強烈な個性でアルバムを名盤たらしめることに大きな貢献をしていたマリア・ジョアンの表現力が今作でも爆発している。一方のアンドレ・メマーリのピアノはいつものことながら限りなく自由で魅力的だ(僕は歌伴において、これほど有機的で生命的なピアノを弾く人をほかに知らない)。

アルバムタイトルの「Algodão」とはコットン、綿のこと。今作は、前述のヒストリカルな名作『Suíte Maria Bonita e Outras Veredas』と雰囲気がかなり近しく、音楽からは壮大な抒情劇が感じられる。サウンド面では近年のアンドレ・メマーリのクラシック路線以外の作品のものの延長線上で、アコースティック・ピアノを中心としつつ様々な楽器がアクセントとして加わったり、特徴的なシンセベースやエフェクトの類も効果的に用いられている。洗練されており、完成度は相当に高い。

(1)「Duplo Falso Par」(ライヴ演奏動画)

アルバムにはアンドレ・メマーリの美しいオリジナルのほか、ギンガ(Guinga)作曲/アルヂール・ブランキ(Aldir Blanc)作詞の名コンビによる曲のカヴァーもいくつか収録されている。(3)「Lendas Brasileiras」、(9)「Catavento e Girassol」、(10)「Canção do Lobisomem」は後者によるもので、メマーリとマリアは以前にコンサートでこれらの楽曲を取り上げており、彼らの“音楽的な美の指標”としているものなのだという。

そしてこれは特筆しておきたいが、(2)「Festa dos Pássaros」を再演してくれたことが個人的には今作の最高のトピックのひとつだった。2007年の『Canteiro』でナ・オゼッチ(Na Ozzetti)が歌い、2018年の『Rã』でアレシャンドリ・アンドレス(Alexandre Andres)が歌い継いできたメマーリの名曲を、マリア・ジョアンという特異な才能が今作で再び歌ってくれた。

(14)「Ninguém Compreende」も『Canteiro』収録曲で、旧来のメマーリ・ファンとしては隅から隅まで堪らない内容となっている。
(3)「Lendas Brasileiras」のエンディングでミルトン・ナシメントの「Ponta de Areia」を引用するという演出も心憎く、素晴らしい。

(5)「Ninguém Compreende」

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