親密で美しいアンサンブルを堪能できるラーシュ・ダニエルソン新譜
スウェーデンのベーシスト/チェリストのラーシュ・ダニエルソン(Lars Danielsson)、イギリスのギタリストのジョン・パリチェッリ(John Parricelli)、そしてフィンランドのトランペッターのヴェルネリ・ポホヨラ(Verneri Pohjola)の新作。アルバムのタイトルはシンプルに『Trio』だが、この何とも味気ないタイトルとは裏腹に彼ら3人の演奏は美しい色彩感覚に満ちている。一見質素ではあるが、だからこそ素材そのものが持つ本質的な豊かさに気付かされるような味わい深い作品だ。
本作はフランス南西部のマルゴーにある著名なワイナリー、シャトー・パルメ(Château Palmer)のサロンで録音された。通常のスタジオ録音のように、各奏者が個別のブースに入って録音するのではなく、同じ一室に3人が集い収録されている。ラーシュ・ダニエルソンの曲を中心に幾つかのカヴァーも交た全12曲、4日間をかけてのレコーディングだったようで、奏者の息遣いさえ聴こえるような親密な空気が漂う。そしてアルバム全体としては、やはり“北欧ジャズ”の特徴を備えている。
(1)「Le Calme au Château」はボサノヴァ風のギターに、物悲しいトランペットが美しく響く。
レコーディング場所であるフランスに因んで、いくつかの要素が散りばめられている。
(5)「La Chanson d’Hélène」は映画音楽で知られるフィリップ・サルド(Philippe Sarde, 1948 – )作曲で、映画『すぎ去りし日の…』(1970年, 原題:Les choses de la vie)からの選曲。
ジョン・パリチェッリ作曲の(11)「Lacour」は色聴で知られるフランスの作曲家/ピアニストのオリヴィエ・メシアン(Olivier Messiaen, 1908 – 1992)に強くインスパイアされており、複雑な相互作用で絡み合う編曲が美しい。
とにかく素晴らしいトリオ・アンサンブルが楽しめる作品だが、個人的にはとりわけヴェルネリ・ポホヨラの悲しみ・怒り・昂りといったあらゆる感情を表現する個性的なトランペットに強い感銘を受けた。
Lars Danielsson – double bass, cello
Verneri Pohjola – trumpet
John Parricelli – guitar