北欧ジャズの金字塔“Liberetto”、交響楽団と魅せる夢見心地の新作『Lars Danielsson Symphonized』

Lars Danielsson Symphonized

“Liberetto”バンド新譜は交響楽団との共演

ラーシュ・ダニエルソン(Lars Danielsson)の人気プロジェクト“Liberetto”の名曲をシンフォニー・オーケストラで再演する、ファン垂涎ものの作品が登場した。『Lars Danielsson Symphonized』と題された2枚組の今作は、ラーシュ・ダニエルソン(b)、グレゴリー・プリヴァ(Grégory Privat, p)、ジョン・パリチェリ(John Parricelli, g)、マグヌス・オストロム(Magnus Öström, ds)のおなじみのカルテットに加え、スウェーデンのイェーテボリ交響楽団(Gothenburg Symphony Orchestra)の絢爛なオーケストラが参加。ジャズ・カルテットとクラシカルなアンサンブルが一体となり、Liberettoシリーズの各作品から厳選された名曲を奏でる。

もともとが究極的に美しいLiberettoだが、今回のオーケストラ・アレンジでそのサウンドはより深みを増した。選曲もベスト的な内容で、『Liberetto』(2012年)から(1)「Liberetto」、『Liberetto II』(2014年)から(2)「Passacaglia」や(3)「Africa」、『Liberetto III』(2017年)から(5)「Lviv」、『Cloudland』(2021年)から(6)「Nikita’s Dream」など代表曲が並ぶ。個人的には「Taksim by Night」あたりも入れてほしかったが、多くのファンが納得する選曲になっていると思う。

(2)「Passacaglia」

アルバム冒頭から素晴らしい演奏が続くが、やはり(3)「Africa」や(5)「Lviv」の美しさは筆舌に尽くし難い。ジャズバンドの演奏とはまた一味も二味も違うオーケストラの緻密かつ繊細なアレンジも素晴らしいが、即興の余地も多く残されており、特にピアノのグレゴリー・プリヴァは随所で個性的な素晴らしいソロを聴かせてくれるし、このバンドのリズム面での特徴であるマグヌス・オストロムのドラミングも相変わらず素晴らしい。

ゲストとして、これまでの“Liberetto”シリーズにも参加してきたアルヴェ・ヘンリクセン(Arve Henriksen)と、イタリアを代表するパオロ・フレス(Paolo Fresu)という二人の素晴らしいトランペッターが数曲で参加する。

トランペット奏者、パオロ・フレスがゲスト参加した(3)「Africa」

ディスク2は今作のための書き下ろしの組曲が収録されており、ソリストとしてイングリッシュ・ホルン/オーボエ・ダモーレ奏者のカロリーナ・グリンネ(Carolina Grinne)をフィーチュアしている。

Lars Danielsson プロフィール

ラーシュ・ダニエルソンは1958年スウェーデン・イェーテボリ生まれ。地元の音楽院でクラシックのチェロを学び始め、のちにデンマークのベーシスト、ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセン(Niels-Henning Ørsted Pedersen, 1946 – 2005)からの強い影響を受けコントラバス奏者としてジャズに転向。1985年にサックス奏者のデイヴ・リーブマン(Dave Liebman)、ピアニストのボボ・ステンソン(Bobo Stenson)、ドラマーのヨン・クリステンセン(Jon Christensen)とカルテットを組みアルバム『New Hands』をリリースしその名を知られるようになった。

2000年代以降はドイツのジャズ・レーベル、ACT Musicの看板アーティストとして多数の作品をリリース。クラシック音楽からの影響の色濃い音楽性が特徴的で、北欧ジャズを牽引する存在となっている。

2012年に“Liberetto”バンドを結成。グループ名はオペラをはじめとする劇場のための音楽の台本「リブレット(Librretto)」と、ラテン語の「自由」を意味する「リベル(Liber)」を組み合わせた造語で、初代のピアニストとしてアルメニア生まれの天才ティグラン・ハマシアン(Tigran Hamasyan)を、ドラムスにはe.s.t.(Esbjörn Svensson Trio)のマグヌス・オストロムを迎えるなど、国や地域性を超えクラシック音楽とジャズを融合させた作品は高く評価された。

Lars Danielsson – contrabass, cello
Grégory Privat – piano
Magnus Öström – drums, percussion
John Parricelli – guitar

Gothenburg Symphony Orchestra conducted by Peter Nordahl
Carolina Grinne – english horn, oboe d’amore

Guests :
Arve Henriksen – trumpet (1-6, 1-8)
Paolo Fresu – trumpet (1-3, 2-5)

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