価値観を変えうる衝撃的音楽体験…! ヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル『Vari』ライヴ盤

Varijashree Venugopal - Vari (The Live Sessions)

Varijashree Venugopal 『Vari (The Live Sessions)』

当サイト『ムジカテーハ』では普段はあまりライヴ盤は紹介しないのだけど、何度か繰り返し聴いているうちに、これは、その特別さをスルーするわけにはいかなくなってきた。

2024年の私のベスト・アルバムTOP10は1位がピンハス&サンズ(Pinhas & Sons)、2位がラウ・ノア(Lau Noah)という超豊作の年だったが、そこで第3位に選出させていただいたのがヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル(Varijashree Venugopal)『Vari』だった。
インド出身のシンガーソングライター/横笛奏者の彼女の音楽は以前からそのグローバルで多岐にわたる活動のなかで度々見かけ、偶然に彼女の歌声に出会う度に後頭部をハンマーで打たれるような強い衝撃を受けていたわけだけど、その集大成がこの『Vari』というアルバムで、まさかのスナーキー・パピー(Snarky Puppy)の創立者マイケル・リーグ(Michael League)によるプロデュースとも相まって、音楽の新たな深淵をぱっくりと広げる驚異的な作品でした。

今回紹介するのは、そのライヴ盤である『Vari (The Live Sessions)』です。
まぁ、とにかく聴いてみて──

彼女の音楽の世界には、私たちが慣れ親しんだ西洋音楽とはまるで異なる物理法則があり、西洋音楽の愛好家にも分かりやすいように配慮がありつつも、さりげにインドの古典音楽(特にカルナティック音楽)による圧倒的な重力でリスナーの耳を引き寄せる強い引力がある。

『Vari』の12曲の中から厳選された7曲を、ベンガルールで演奏。

例えば(2)「Ranjani」。
イントロの打楽器奏者二人による驚愕のコナッコル1の掛け合い、摩訶不思議なようでいて実はそう特殊でもない拍子、マイケル・リーグのセンスの塊としか言いようのない効果的なシンセ、そして何よりもヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパルの圧巻のスキャット・ソロ。
8分間の音楽体験が、一生の価値観を変えるかもしれない、驚異的なライヴであることは間違いないだろう。

(2)「Ranjani」

演奏は彼女の故郷であるベンガルールで行われた。バンドはクインテット編成で、バックには打楽器/シンセのマイケル・リーグ(Michael League)、ドラムス/パーカッションのプラマス・キラン(Pramath Kiran)、ヴァイオリニストのアプールヴァ・クリシュナ(Apoorva Krishna)、ムリダンガム奏者のジャヤチャンドラ・ラオ(Jayachandra Rao)、そしてキーボード/シンセサイザー奏者のヴィヴェク・サントシュ(Vivek Santhosh)を擁している。

(3)「Jaathre」

スタジオ録音の『Vari』も最高にアーティスティックな作品だったが、今作はスタジオ録音では成すことの難しいライヴ特有の生々しさや緊張感を捉えているという点で、大きな価値がある。特にカルナティック音楽の技法をジャズに応用したヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル独自の「カルナティック・スキャット・シンギング」と呼ばれるスタイルが非常に鮮烈な印象を残す。

(3)「Kannada」

Varijashree Venugopal 略歴

歌手/フルート奏者のヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパルは1991年にカルナータカ州にあるインド第3の都市ベンガルールに生まれた。Wikipediaによると彼女はバラモンの家系に生まれ、1歳半で約40のラーガを識別し、4歳から正式なカルナティック音楽の教育を受け、その頃にはすでに約200のラーガを識別するという類稀な才能を示していたという。

地元ベンガルールではバンド「Chakrafonics」での活動で知られるが、ソロとしてはインド系の著名アーティストや、イギリスの若き天才音楽家ジャイコブ・コリアー、フランスのピアノトリオであるEYM Trioとの共演、ブラジル随一のバンドリン奏者アミルトン・ヂ・オランダとの共演など、広く国際的にも活動の幅を広げている。

Varijashree Venugopal – vocals, flute
Michael League – synth bass, darbuka
Pramath Kiran – percussions, drums
Jayachandra Rao – mridangam
Apoorva Krishna – violin
Vivek Santhosh – keyboards, Synthesizers

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  1. コナッコル(konnakol)…南インドのカルナティック音楽に特徴的な、手でターラ(拍子)を数えながら同時に口で歌われる音節の組み合わせ。似たものに、北インドのタブラのリズムを口承するためのボル(bol)がある。 ↩︎
Varijashree Venugopal - Vari (The Live Sessions)
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