時を織る経糸と緯糸。ジヴ・ラヴィッツ&クリストフ・パンザニ、音楽の進化の歴史を象徴する傑作

Ziv Ravitz & Christophe Panzani - Warp & Weft

Ziv Ravitz & Christophe Panzani 『Warp & Weft』

イスラエル出身のドラマー、ジヴ・ラヴィッツ(Ziv Ravitz)と、フランス出身のクリストフ・パンザニ(Christophe Panzani)のデュオによる『Warp & Weft』は、おそらく2026年屈指のジャズの名作だ。まるでそのテイクの少なさや、スタジオをレンタルした時間の短さで競うかのように、短期間のセッションでテーマと即興演奏を主体に録音されることの多いジャズという分野の、しかもデュオとしては間違いなく異例の、2年間という制作期間を経て誕生したアルバムは、タイトル「Warp & Weft」(経糸たていと緯糸よこいと)という言葉が喚起するイメージの期待を裏切らない、素晴らしい芸術だ。

さまざまな音が、重なり交差し合い、ひとつの織物を成す。
充実した45分間のなかで、二人はときには多重録音も用いてそれぞれの経糸と緯糸の役割を入れ替えながら音楽を織り込んでいく。いくつもの音の糸は、それぞれが居場所を見つけ、あるべき場所へと収まっていく──クリストフ・パンザニはテナーサックス、クラリネット、フルート、キーボード。そしてNYでももっとも信頼されるドラマーであるジヴ・ラヴィッツはドラムスだけでなくギター、ベース、キーボードなども演奏。完全な即興でもなく、かといって完全に“作られたもの”でもない、不思議な時間芸術が表れていく。

(1)「The Red Toy Car and the Piano」

アルバムの後半に配置されたために目立たないかもしれないが、(9)「The Mysterious Tale of J.S.」は今作を象徴する1曲だ。「J.S.」が何を指すかは明示されていないが、おそらくは理知的な対位法や即興演奏で知られたJ.S.バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685 – 1750)への畏敬の念が込められていると考えるのが自然だろう。フルートのシークエンス、バスクラリネットによるう美しい低音、そしてサックスの叙情的な即興。それらすべてを包み込むように寛容なドラムス。こうした全てのものは、彼ら二人が音楽の歴史に示した敬意だ。

Ziv Ravitz & Christophe Panzani プロフィール

ジヴ・ラヴィッツは、1976年イスラエルの古都ベエルシェバ生まれのジャズドラマー/作曲家。音楽家の家庭に生まれ、幼少期よりギター、ピアノ、ドラムスに親しみ、9歳でドラムスに専念。13歳からプロ活動を開始し、2000年に渡米してバークリー音楽大学ジャズ作曲科を卒業した。以後、アヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)、マーク・ターナー(Mark Turner)、リー・コニッツ(Lee Konitz)、シャイ・マエストロ(Shai Maestro)、エスペランサ・スポルディング(Esperanza Spalding)ら世界的なミュージシャンとの共演を重ねるなど幅広い活躍を続けている。

クリストフ・パンザニは、1975年フランス・イゼール県ラ・トロッシュ生まれ。サックスのほか、クラリネットやフルートなども演奏するマルチ木管楽器奏者として知られ、カーラ・ブレイ・ビッグバンド(Carla Bley Big Band)のメンバーとして2002年より活動するほか、アン・パセオ(Anne Paceo)、ヴァンサン・ペイラーニ(Vincent Peirani)、ガエル・ファイユ(Gaël Faye)ら多様なアーティストと共演を重ねている。

Christophe Panzani – tenor saxophone, flute, alto flute, bass clarinet, clarinet, keyboards
Ziv Ravitz – drums, electronics, guitar, keyboards, bass

Quatuor Kaija :
Camille Garin – 1st violin 1
Madeleine Athané-Best – 2nd violin
Maëlle Desbrosses – viola
Juliette Serrad – cello

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