Música Terra が選ぶ 2025年ベストアルバムTOP10

2025 best album

2025年を鮮やかに彩ってくれた極私的な10枚です。

① Beamo / Leszek Możdżer(ポーランド)

今年、もっとも音楽的な刺激を受けた作品といえば、ポーランドの作曲家/ピアニストのレシェック・モジジェル(Leszek Możdżer)によるこのアルバムでした。それぞれ異なるチューニングが施された3台のピアノを中心に、ダブルベース、パーカッションという特徴的なピアノトリオ編成で、12平均律を超えて音楽の世界を大胆に拡張。実験的でありながら、音楽としての美しさも兼ね備えた、まさに革命的なアルバム。初めて聴いたときの衝撃が忘れられません。

3台のピアノで革新的な音楽表現を試みる「Ambio Bluette」

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② Pix’Elles Rhapsody / Kadosch(フランス)

ブラジル音楽の豊かなハーモニー、バルカン半島の不規則なリズム、南インド古典音楽、地中海周辺地域の古楽など多文化にインスパイアされ制作された、フランスの作曲家/ギタリスト/マルチメディア・サウンドエンジニア、カドーシュ(Kadosch)の新作です。歌詞はフランス語、英語、イタリア語、ポルトガル語、そして消滅した線文字Bで歌われています。なかなかに強烈な個性が光る、とてつもなくアーティスティックな逸品。

失われた言語を探究する、印象的なアカペラ曲(13)「Kaprolin」

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③ Reações Adversas / Ao Persistirem os Sintomas / Tó Brandileone(ブラジル)

ブラジルのシンガーソングライター、ト・ブランヂリオーニ(Tó Brandileone)が“破滅と再生”をテーマに描き出す二部構成のアルバム。アヴァン・ロック寄りの前半『Reações Adversas』と、洗練された美しいメロディーがつづく後半『Ao Persistirem os Sintomas』はそれぞれ独創的な魅力を放つ。今年もブラジルからは素晴らしいシンガーソングライター作品がリリースされましたが、その中でももっとも刺さったのがこちらでした。

美しく叙情的なメロディーの「Tanto Quando」

▼ Reações Adversas / Ao Persistirem os Sintomas / Tó Brandileone(ブラジル)

④ butter / Sofi Tukker (アメリカ合衆国)

EDMの分野で成功を築いたニューヨークを拠点とする男女デュオ、ソフィ・タッカー(Sofi Tukker)ですが、今作はデュオの片割れであるドイツ出身のソフィー・ホーリー=ウェルド(Sophie Hawley-Weld)の音楽的ルーツであるブラジル音楽を軸に、自らの既存楽曲をオーガニックに再解釈。
過去のアルバム収録曲のアコースティック・アレンジがほとんどですが、はっきり言って原曲よりずっとずっと良い。

セウ・ジョルジをフィーチュアした「Bread (butter version)」

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⑤ Luar Total / Alexandre Andrés(ブラジル)

“ミナス新世代”の魔法、再び──。
大傑作『Macaxeira Fields』(2012年)へと再訪するアルバム『Sem Fim (Acústico)』(2025年)を経て、完全新作として発表されたアレシャンドリ・アンドレス(Alexandre Andrés)の待望の作品!
アコースティック楽器を中心としたバンド編成、弦楽四重奏やクラリネット三重奏との絡みなども含め終始聴き応え満載の素晴らしいアレンジが堪能できます。ポピュラー音楽であり、芸術音楽であるというその境目のちょうど良いところにある、極上の名盤。

パートナーであるルシアナ・ヴィエイラ(Luciana Vieira)との関係にインスパイアされ、「今ここにある存在」の尊さを詩的に歌う「Luar Total」

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⑥ .ar / Federico Arreseygor (アルゼンチン)

アルゼンチンの現代ジャズ/ネオ・フォルクローレのシーンを代表するフェデリコ・アレセイゴル(Federico Arreseygor)の新作。ラ・プラタ周辺に特有な、独特の美しさと先進性を堪能できる傑作!
アルバムタイトルにはアルゼンチンの国別コードトップレベルドメインである「.ar」を冠し、同国の文化やアイデンティティを誇り高く反映しています。

「Secreta」。この爽やかなフィーリングはアルゼンチン・ジャズに特有

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⑦ Strange Heavens / Linda May Han Oh(マレーシア、アメリカ合衆国)

現代ジャズを牽引する女性ベーシスト、リンダ・メイ・ハン・オー(Linda May Han Oh)の新作も強く印象に残る素晴らしいものでした。アンブローズ・アキンムシーレ(tr)とタイショーン・ソーリー(ds)という最強の編成によるコードレス・トリオならではの充実した演奏に加え、個人的にはアルバムの一部分で明確なテーマとなっていたショーン・タンという素晴らしい絵本作家との出会いのきっかけを与えてくれたことにも絶大な感謝をしています。

移民としてのリンダ・オーの感覚を通した“アメリカ”を表現。「Strange Heavens」

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⑧ Sílvia & Salvador / Sílvia Pérez Cruz & Salvador Sobral(スペイン、ポルトガル)

欧州を代表する歌手の二人──カタルーニャのシルビア・ペレス・クルス(Sílvia Pérez Cruz)と、ポルトガルのサルヴァドール・ソブラル(Salvador Sobral)による親密なハーモニーが美しいデュオ作。二人のオリジナルのほか、世界各地のスペイン語やポルトガル語圏の音楽家たちが楽曲を提供するなど、充実すぎるほどの作品です。

「Hoje já não é tarde」はサルヴァドールの姉、ルイーザ・ソブラル(Luísa Sobral)作

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⑨ Kumlango / Lenna Bahule(モザンビーク)

モザンビーク出身の歌手/作曲家/芸術活動家レナ・バウレ(Lenna Bahule)のアルバムで、複数のアフリカの言語やレユニオンのクレオール語、インドのカンナダ語、さらには彼女が創作した架空の言語も用いられるなど言語の枠を超えた表現が特徴的。モザンビークやアフリカ南部の伝統音楽に由来するリズム、効果的なエレクトロニック、そして広い音域を持つ彼女の柔らかく美しい声が融合するサウンドスケープも素晴らしい。

「Nyamussorro」。アルバムは“人生のサイクル”をテーマとし、無知から悟りへ、日常から神秘へと旅する魂の物語を描いている

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⑩ Tatekieto / Pulciperla(フランス、コロンビア)

フランスのジャズロック・カルテット、プルシネルラ(Pulcinella)がコロンビアの女性3人組ラ・ペルラ(La Perla)と出会い結成された、驚愕のミクスチャー集団がプルシペルラ(Pulciperla)。カオス一歩手間のエネルギッシュな演奏、ヴォーカルやラップに終始心躍ります。

サイケロックにヒップホップ、インドやブラジルの要素もごちゃ混ぜな「Tatekieto」

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