ブラジルの豊かな文化に寄り添う叙情的な傑作。マヌー・サッジオーロ『AMA』

Manu Saggioro - AMA

アントニオ・ロウレイロ全面参加!Manu Saggioro 待望の2nd

ブラジル・サンパウロ州出身のシンガーソングライター、マヌー・サッジオーロ(Manu Saggioro)の2ndアルバム『AMA』。ブラジル・ラジオ文化賞(Rádio Cultura Brasil)を受賞した前作『Clarões』(2019年)に引き続きセウマール(Ceumar)が音楽監督を務め、パーカッションでアントニオ・ロウレイロ(Antonio Loureiro)が全面参加しており、自然やスピリチュアル文化を音楽の基底に据えた、詩情豊かで穏やかな素晴らしいアルバムに仕上がっている。

編成は前述のメンバーのほか、ピアノ/アコーディオンでホジェリオ・プラザ(Rogério Plaza)、ギターでエミリオ・サントス(Emílio Santos)が参加。バックの演奏は徹底的に彼女の豊かな精神性に寄り添うようで、マルチ奏者として革新的なソロ活動で広く知られるアントニオ・ロウレイロでさえ、アフロ・スピリチュアルな演奏に徹している。

(1)「Ouve o Silêncio」(静寂に耳を傾けて)は著名な人類学者/作家/詩人/大学教授であるカルロス・ホドリゲス・ブランダン(Carlos Rodrigues Brandão, 1940 – 2023)との共作曲。静かで瞑想的なサウンドが印象的な楽曲で、歌詞では内なる静寂に寄り添い、今この瞬間に意識を集中することについて歌い、人生に注意深く耳を傾けるようにと呼びかける。

以降の7曲はすべてマヌー・サッジオーロ単独での作詞作曲。(2)「Água de Cachoeira」(滝の水)は乾燥した大地の表面と、その上を流れる滝の水について比喩的に歌い、感情を堰き止めてしまえば私たちの顔や魂もまた乾燥してしまうことを表現している。

(2)「Água de Cachoeira」

シンプルなメロディーと、アコーディオンの絡みが美しい(6)「Vivendo com Guarani」(グアラニーと共に生きる)は、いわゆる“文明社会”と、伝統的な先住民族の生活の対比を通して幸せな生き方とは何かを模索する。この歌は、先住民族の作家/環境保護活動家アイルトン・クレナック(Ailton Krenak)や、ヤノマミ族のシャーマン/環境保護活動家ダヴィ・コペナワ・ヤノマミ(Davi Kopenawa Yanomami)への敬意を表明したものだ。

(7)「Mestres Animais」(動物の師匠たち)は我々人間と、それが家畜として利用する動物たちとの関係について歌う。これは視点を変えることの意義を強調するもので、動物が生きる自然界から私たちが学べることについての示唆に富んだメッセージだ。

(7)「Mestres Animais」

今作は2022年に制定されたパウロ・グスタヴォ法1に基づく助成金の交付を受けてリリースされた。

Manu Saggioro 略歴

マヌー・サッジオーロ(本名:Manuela Saggioro)は、サンパウロ州ジャウー生まれのシンガーソングライター/ギタリスト。現在は同州バウルーを拠点に活動している。音楽キャリアは20年以上に及び、10代の頃から1960年代の音楽ムーブメント、ビートルズやヒッピー文化に影響を受けながら情熱を注いできた。元々音楽家を目指していたわけではないが、自然とその情熱が職業につながったようだ。

彼女の音楽スタイルは、主にMúsica Popular Brasileira (MPB) を基調とし、フォークや伝統的なブラジル音楽の要素を融合させている。自然、精神性、先住民(グアラニー族など)の文化、アフリカ系ブラジル文化をテーマにした内省的でスピリチュアルな楽曲が多い。また、社会的不平等や土地闘争を問う歌詞が特徴的だ。一方で、メタル・プロジェクトのヴァンドローヤ(Vandroya)やソウルスペル・メタル・オペラ(Soulspell Metal Opera)にヴォーカルとして関わるなど、多様なジャンルを経験してきている。また、女性のみで構成されるバンド、バンダ・インケラシュ(Banda Inlakesh)ではギタリストを務めている。

2019年に1stアルバム『Clarões』をリリース。2025年にはより内省的な『AMA』を発表した。彼女の音楽は、ブラジルの伝統と現代性の融合が高く評価されている。

Manu Saggioro – vocal, guitar
Rogério Plaza – piano, accordion
Emílio Santos – guitar
Antonio Loureiro – percussion

  1. パウロ・グスタヴォ法(Lei Paulo Gustavo)…新型コロナウイルス感染症によるパンデミックによって大きな経済的・社会的な打撃を受けた文化芸術セクターを支援するために2022年に制定された制度で、文化の多様性を起業、経済、雇用創出の原動力として推進し、多様な文化表現の相互作用を奨励して文化部門を社会経済発展の原動力へと変革することを目的とする。名称は2021年に新型コロナウィルス感染症で亡くなった、ブラジルで絶大な人気を誇ったコメディアン/俳優/脚本家の名に因んでいる。 ↩︎

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