アントニオ・ロウレイロがプロデュース!ミナスの新人ナラ・ピニェイロ、最高のデビュー作

Nara Pinheiro - Tempo de Vendaval

フルート奏者/歌手ナラ・ピニェイロ、高度に洗練されたデビュー作

ブラジル・ミナスジェライス出身のシンガーソングライター/フルート奏者、ナラ・ピニェイロ(Nara Pinheiro)のデビューアルバム『Tempo de Vendaval』。プロデュースをアントニオ・ロウレイロ(Antonio Loureiro)が務めており、多くの楽曲ではサウンドもロウレイロの個性が強く表れた作品だ。徹底的にこだわり抜いた高度な編曲やサウンド・プロダクションだが、それを強く意識させない柔らかく自然な歌声や手触り感覚があり、聴きやすく、かつ深みのある素晴らしいアルバムとなっている。

多くの楽曲はナラ・ピニェイロと、彼女の音楽と人生のパートナーである7弦ギタリスト/アコーディオン奏者のマルシオ・ゲウベル(Marcio Guelber)との共作だ。(6)「A Lô」はヴィクトル・ゲウベル(Victor Guelber)、(7)「Parto」がアントニオ・ロウレイロとチアーゴ・アムヂ(Tiago Amud)の作。ほかにも一部にナラ、マルシオそれぞれが別の人と作った楽曲がある。

柔らかな生ピアノとナラのヴォーカル、多彩なブラジルのパーカッション、そしてロウレイロとも繋がりのあるロサンゼルスのジェネヴィーヴ・アルタディ(Genevieve Artadi)あたりのポップセンスとの共通点も感じさせる(1)「Clareia」から、心地よい5拍子が特徴的な本作のハイライトのひとつ(2)「Tempo de Vendaval」の冒頭の2曲から、既に傑作を確信する。ナラ・ピニェイロのヴォーカルはとてもオーガニックで自然体だが、彼女の魅力はむしろフルート演奏の確かな技量にありそうだ。フルートは幾重にもオーヴァー・ダビングされ、バッキングにソロにとアルバム全編に渡って重要な役割を担う。

(1)「Clareia」

(3)「Despertar」も非常にエキサイティングな展開の楽曲で、冒頭2曲に続きナラとマルシオの共作曲だが、ここでもアントニオ・ロウレイロの天才的な発想のアレンジが効いている。

ミナスジェライスの山と風景、セーハ・ダ・マンティケイラでの生活、そして時間、感性、新しい道の探求について歌う(4)「Âmago」では、一旦ナラのヴォーカルとフルート、マルシオのギター、ロウレイロのピアノのアンサンブルでクールダウン。ここではアコースティックなアンサンブルの豊かさを堪能できる。

(5)「Serena」はまるでアントニオ・ロウレイラの曲かと見紛うほどの素晴らしい楽曲だ。作詞作曲はナラ・ピニェイロと、彼女の友人で作曲家/歌手のジュリアナ・スタンザーニ(Juliana Stanzani)でクレジットされているが、おそらくはロウレイロのアレンジの貢献が大きい。

その後もアルバム全体を通してあまりに素晴らしいアレンジが施された楽曲が続くので、ぜひ確かめてほしい。

7弦ギターのマルシオ・ゲウベルとデュオで披露する(2)「Tempo de Vendaval」(アルバム収録とは別音源)。

Nara Pinheiro 略歴

ナラ・ピニェイロは第21回のBDMGインストゥルメンタル・アワードでファイナリストとなった作曲家/フルート奏者。環境管理の学位を取得しており、自然環境が芸術的表現に与える影響を研究する学者でもある。

音楽の分野ではリオデジャネイロ連邦大学で音楽の修士号を取得、ジュイス・デ・フォーラ連邦大学でフルートの学士号を取得。その後BDMG ヤング・ミュージシャン賞、BDMG ヤング・インストゥルメント賞を受賞するなど今後の活躍が楽しみなアーティストである。

Nara Pinheiro – vocal, flute
Marcio Guelber – 7-string guitar, accordion
Antônio Loureiro – drums, piano, electric bass, guitar, synth, percussion, chorus
Camila Rocha – contrabass

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