一種独特の洗練された現代ムガームジャズ。エティバル・アサドリ、自己を探求をテーマに掲げる新譜

Etibar Asadli - WYA

エティバル・アサドリ2026年作『WYA』

現代ムガームジャズの旗手であるピアニスト/作曲家エティバル・アサドリ(Etibar Asadli)の2026年新譜『WYA』は、アゼルバイジャンのアイデンティティたるムガームジャズが醸す独特の東欧・中東・西アジアの文化境界的テクスチャーと、エレクトロニックやヒップホップ、アンビエントなどの複合的な音楽要素が絡み合う、一種独特な洗練を見せた興味深い作品だ。

今作はピアノ/キーボードのエティバル・アサドリと、フランスのドラマーのマルタン・ヴァンジェルメ(Martin Wangermée)のデュオ編成を基本としており、ムガーム特有の音階や饒舌なトリルを特徴とするエティバル・アサドリのピアノと、ヒップホップを取り込んだ解像度の高い現代的なドラミングが面白い。それは一聴すると奇妙な対比のように聴こえるが、聴き進めるにつれて美しい調和として響いてくる。

アルバムのタイトル『WYA』は「Who You Are?」の略とされ、テーマとして「See what’s inside」(中身を見てみて)というテーマが強調されている。冒頭に収められたタイトル曲(1)「WYA」の混沌から、アイデンティティへの探求であることは明白だ。楽曲は後半で高密度なドラムが雪崩れ込み、狂乱を見せるが、続く(2)「The ripples are whispering」のムガームに根差した内省的なソロピアノによって今作のストーリーテリングの充実をリスナーは思い知らされる。

(2)「The ripples are whispering」

ムガームの主要なモード(旋律様式)の名を冠した(3)「Bayati-Shiraz」と(9)「Bu qala」にはそれぞれムガーム歌手のサヒブ・アサドリ(Sahib Asadli)とイルキン・ドヴラトフ(İlkin Dövlətov)がゲスト参加。

Etibar Asadli 略歴

エティバル・アサドリは1992年アゼルバイジャンの首都バクー生まれのピアニスト/作曲家。現在はフランス・パリを拠点に活動している。
6歳頃からピアノを始め、2009年にバクー音楽院の作曲科に入学。以来、ピアニストとして成功し政府のイベントや様々なプロジェクト、アゼルバイジャン内外のフェスティバルやコンペティションで次第に注目度を高めてきた。

2018年9月にバクーで行われた世界柔道選手権大会のオフィシャルテーマ曲も担当。ムガームジャズの系譜を受け継ぎつつ、エレクトロ・ミュージックとの融合など独自の音楽を探究。自らグランドピアノの調律までも行うなど他のアゼルバイジャンのムガーム系ピアニストにもない個性を発揮する。

Etibar Asadli – piano, keyboards
Martin Wangermee – drums

Guests :
Sahib Asadli – vocal (3)
İlkin Dövlətov – vocal (9)

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