現代グウォカ・ジャズの旗手ソニー・トルーぺ、伝統をジャズと室内楽で革新する『Evy Danse』

Sonny Troupé & Quartet Add 4 - Evy Danse

グウォカの伝統を再構築する三部作の完結編

グアドループの伝統的な音楽「グウォカ」を現代的に再解釈する活動で知られるドラマー、ソニー・トルーぺ(Sonny Troupé)。2026年リリースの『Evy Danse』は、2013年の『Voyages et rêves』、2017年の『Reflets Denses』から連なる三部作の完結編として位置付けられており、アルバムを通して断片的に語られる架空の女性「Evy」の物語を通して、ソニー・トルーぺ自身の音楽の変容とその終着点を表現する野心的な作品となっている。

演奏はピアノトリオに加えてグウォカ特有の伝統打楽器「カ」を加えた4人編成を基本に、多くの曲で弦楽四重奏やゲストも加わる。特徴的なのは、グウォカ、ジャズ、クラシック室内楽といった要素が単純に補完的に融合しているのではなく、彼の音楽の構造を内部から”変容”させようと試みられていることだ。ソニー・トルーぺとチェリストのギヨーム・ラティル(Guillaume Latil)の共同作業による弦楽四重奏のアレンジは象徴的で、歌謡曲にありがちなメロディーやハーモニーを補完するような動きではなく、それ自体がグウォカの複雑なポリリズムの構造体として機能している。(1)「Limyè」や、9分以上に及ぶ壮大な(6)「Santiman démélé」など、カリブ的な身体感覚によって奏でられる“グウォカ・ジャズ”のひとつの頂点と言えるだろう。

(1)「Limyè」

各楽曲はグアドループの歴史や文化とも接続する。
(2)「Une étoile toujours sera la bienvenue」では、ソニー・トルーぺの父(Georges Troupé, サックス奏者)も参加したグループである「Gwakasonné」を結成した“グアドループ文化の父”と呼ばれる詩人/作曲家ロベール・ウマウ(Robert Oumaou, 1954 – 2018)の詩を引用。
(3)「An Bwa Matouba」は1802年のナポレオン時代のフランスによるグアドループの再占領、ひいては奴隷制の復活に抵抗した運動の指導者ルイ・デルグレ(Louis Delgrès, 1766 – 1802)の終焉の地マトゥーバを舞台とし、ゲスト参加のローラン・ラルサンゲ(Laurent Lalsingué)のスティールパンもフィーチュアしカリブの誇りを表現している。

(8)「San Mélé」

圧巻は幻夢的な音響とリズムが渦巻く(9)「Evy Danse」と、ラストの18分弱の大作(10)「Léwòz N°3」への流れ。夜通しつづくようなカ(ka)の強靭なグルーヴの上で自由に繰り広げられる知的な即興の応酬は、地に足のついたグアドループの確かなリズムと、探求心が生んだ音楽の洗練、そして未来を切り拓く実験精神の類稀な体現だ。 

Sonny Troupé プロフィール

ソニー・トルーぺはカリブ海のフランス海外県グアドループ出身のパーカッショニスト/作曲家。父はサックス奏者で「gwo ka modèn(現代グウォカ)」の旗手であるジョルジュ・トルーぺ(Georges Troupé)。

幼少期からグアドループ伝統音楽グウォカ(Gwoka)の中心的な打楽器「Ka(カ)」に親しむ。6歳でモダン・グウォカ・グループ「Kimból」に参加し、その後はドラムスやヴィブラフォンも習得。トゥールーズ国立音楽院やアゴスティーニ音楽学校で学び、ジャズ、クラシック、電子音楽、カリブ音楽など幅広い要素を吸収した。

口承のグウォカを現代的に再解釈することをライフワークとし、2010年に自身のカルテットを結成。ポリリズムを活かした編曲、サンプリング、歴史や詩を織り込んだ物語性のある作品で、伝統への敬意と革新を両立させる音楽家として世界的に評価されている。

Sonny Troupé Quartet :
Jonathan Jurion – piano, Rhodes, chorus
Sonny Troupé – drums, percussions, sampler, creation samples, chorus
Mike Armoogum – bass, chorus
Andy Bérald – ka, chorus

Add 4 :
Verena Ruiling Chen – 1st violin
Pauline Denize – 2nd violin
Valentine Garilli – viola
Guillaume Latil – cello

Guests :
Lucien Troupé – vocal (2, 5)
Lou Tavano – vocal (8)
Laurent Lalsingué – steel pan (3)
Christian Laviso – guitar (10)
Raphaël Philibert – alto saxophone (2, 10)

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