ピアノトリオ+弦楽四重奏&歌で切り拓く新世代の音楽。ギリシャ発、マルコス・ハイデメノス新譜

Markos Chaidemenos - Light Beam

マルコス・ハイデメノスの野心的な新作『Light Beam』

ギリシャのジャズピアニスト/作曲家、マルコス・ハイデメノス(Markos Chaidemenos)の2026年新譜『Light Beam』は、ピアノトリオを軸に据えつつ、弦楽四重奏と女性ヴォーカルを加えた野心的な作品だ。

ピアノと弦楽四重奏によるオープニング・トラック(1)「Si-iS」は、物語の始まりの予感に満ちた、あるいは人生に何も心配することのない日の穏やかな朝の空気のように清々しく澄んだ空気で始まる。楽曲は後半に進むにつれ、ピアノのアドリブや弦楽のクレッシェンドによって何かが起こりそうな気配が漂うが、予感は予感のままで締め括られる。物語が突如大きく動き、聴く者をマルコス・ハイデメノスの世界へと引き込むのが(2)「Light Beam」だ。短調のドラマティックな音楽の展開が、ヴォーカリストのイリニ・アラバツィ(Irini Arabatzi)のミステリアスな詩世界を互いに補完し、今作の印象を強く決定づける。

(2)「Light Beam」(テーマのみ)

(3)「Ego」は今作最長の6分を超える楽曲で、ヴォーカルによるテーマのパートと、アドリブを中心としたパートがそれらの境界を曖昧にしながら力強く推進する傑作だ。弦楽アンサンブルによるサポートも素晴らしく、内省的な抒情性に美しい深みをもたらす。

(3)「Ego」(テーマのみ)

スウィングする6/8拍子のフィーリングを持つ(5)「Pisa」や、それにつづく絢爛なスウィングを聴かせる(6)「33」も今作の特筆すべき楽曲だろう。ピアノソロはハードバップの語彙も感じさせ、それでいてヨーロピアン・ジャズの心を抉られるような建築学的抒情も備えている。

仮にヴォーカルやストリングス・カルテットが無くても充分に“強い”音楽だが、それらを意図的に加えたことで“比類なき強さ”を得たアルバム、だと評したい。

Markos Chaidemenos 略歴

マルコス・ハイデメノスは1989年、ギリシャ・アテネ生まれのピアニスト/作編曲家。ピアノを始めたのは16歳からと比較的遅かったが、国立カポディストリア大学で情報通信学の学士号を取得した後、クラシックピアノとジャズピアノ双方の専門教育を受け、2015〜2017年にはイオニア大学音楽学部でジャズ・パフォーマンスの修士号を取得した。

影響を受けた主なピアニストとしてオスカー・ピーターソン(Oscar Peterson)、チック・コリア(Chick Corea)、マルグリュー・ミラー(Mulgrew Miller)らを挙げている。
2016年に初のアルバム『Remains(Live)』をラジオ番組『Jazz in the City』のライヴ録音でリリース。以降、ピアノ・トリオを基盤とした作品を精力的に発表し、『New Era(Live at The Zoo)』(2020年)、『Caravan』(2021年)、『The Day After』(2024年)を経て、最新作『Light Beam』(2026年)では弦楽四重奏とボーカルを加えた大編成に挑戦。ジャズの即興性と現代クラシックの構造美を融合させた、叙情的で開放的なサウンドが国内外で高く評価されている。 現在も作曲・演奏活動のほか、Musical Praxis Conservatoryでジャズピアノの指導も行うなど、幅広い音楽活動を展開している。

Markos Chaidemenos – piano, compositions
 
Irini Arabatzi – vocals, lyrics
Babis Karasavvidis – 1st violin
Kalliopi Mitropoulou – 2nd violin
Stelios Papanastasis – viola

Giorgos Tamiolakis – cello

Yiannis Vagianos – contrabass
Panagiotis Kostopoulos – drums

Markos Chaidemenos - Light Beam
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