ムニール・ホッスン、新バンドでのライヴ盤『MysticSamba』
ブラジル出身のベーシスト/ギタリスト/シンガーソングライターのムニール・ホッスン(Munir Hossn)の音楽には、いつも陽のように優しい暖かさがあり、希望と悦びの感情に満ちている。そしてその音楽は、スタジオ録音よりも、ライヴでより一層輝きを増すみたいだ。
5人の女性ミュージシャンとのバンド(=Elas)による最高のライヴ録音『Elas』から2年。彼の新作『MysticSamba』は、同じマイアミの地で、メンバーを一新した同名の新プロジェクトによるライヴ録音のアルバムだ。マイアミという地らしく、前作同様にキューバ出身のミュージシャンが多くを占める7人編成のバンドで、アフロ・ブラジル音楽とラテン音楽、そしてジャズ/フュージョンやAORを取り込んだ音楽を聴かせてくれる。“極彩色”と形容するほどギラついてなく、より豊潤で慎ましやかな“多色”という表現が合うように思う。
メインヴォーカルと、曲によってベースとギターを使い分けながら担うムニール・ホッスンの周囲には、コーラスの役割も担う3人の女性奏者がサブフロントとして目立っている。彼のパートナーであり今作の共同プロデューサーを務めるパーカッション奏者マルレス・クレメンテ(Marlys Clemente)。そしてヴァイオリン奏者ガブリエラ・ディアス(Gabriela Diaz)と、鍵盤奏者ディアネラ・デ・ラ・ポルティージャ(Dianela de La Portilla)だ。動画も公開されている(1)「Dança Aeh」や(2)「Deja Vu」を観てもわかる通り、彼女たちはステージを華やかに彩るだけでなく、まるでムニール・ホッスンの分身かのようにコーラスと楽器でサウンドに色彩を与えている。
他の3人の男性メンバーは、バンドのサウンドの核の部分を築く。
複数の鍵盤を操り、左手のシンセベースから右手のエレクトリック・ピアノ、オルガンなどの音色でハーモニーの大部分をサポートするパチョ・チバス(Pacho Chibás)、類稀な独特のセンスを持つドラマーであるイズラエル・モラレス(Israel Morales)、そして繊細なリズムを奏でるミゲル・アンヘル・パシフィコ(Miguel Angel Pasifico)の貢献は、”ミスティック・サンバ”の揺るぎない地盤だ。
ムニール・ホッスンは”サンバ”を固定された伝統ではなく、国境を越えて移動し続ける“生きた言語”として捉える、という考えを体現している。今作ではキューバに代表されるラテン・ジャズとの融合を中心に据えるが、(3)「Baile Do Sol」ではカルカベがリズムを刻み、北アフリカのグナワ音楽と親密に接続。
ポルトガル語とスペイン語の境界さえも越えながら、ブラジル、ラテン、アフリカの壁を軽やかに超えてゆく。
Munir Hossn プロフィール
ムニール・ホッスンは、1981年11月24日ブラジル・パラナ州マンダグアリ生まれのマルチ器楽奏者/シンガーソングライター/プロデューサー。アンゴラ系・アラブ系・イタリア系・ブラジル先住民の多様なルーツを持ち、幼少期をアフリカ系ブラジル文化の中心地であるバイーア州サルバドールで過ごした。現在はアメリカ合衆国マイアミを拠点に活動し、国境を超えた音楽表現を追求している。
アフロ・ブラジリアン・リズムを基盤に、ジャズ、ファンク、ワールドミュージック、コンテンポラリー・グルーヴを自在に融合させた独自のスタイルが特徴。ベースとギターの卓越した演奏力、リズムの深み、即興性、そしてバンド全体のエネルギーを重視したサウンドは、伝統と現代を独創的に繋ぐ音楽として世界的に高く評価されている。これまでクインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)、エルメート・パスコアール(Hermeto Pascoal)、ジョー・ザヴィヌル(Joe Zawinul)、リー・リトナー(Lee Ritenour)、ジルベルト・ジル(Gilberto Gil)、ジェイコブ・コリアー(Jacob Collier)など国際的なアーティストとのコラボレーションを重ね、グラミー賞ノミネート作品への参加や世界各地の主要フェスティバルに出演。2011年の『INdiGenaJazz』、2015年の『Made In Nordeste』、2020年の『Vientre』、2023年のガナーヴィヤ(Ganavya)とのデュオ作『Sister Idea』など、意欲的な作品を発表し続けている。
Munir Hossn – bass, guitar, vocals
Marlys Clemente – percussion, vocals
Dianela de La Portilla – keyboards, vocals
Gabriela Diaz – violin, vocals
Pacho – keyboards
Miguel Angel Pasifico – percussion
Israel Morales – drums