- 2024-04-19
- 2024-04-17
美しく燃え上がる、激情のピアノ。クリスチャン・ランダル新作はシューマン『詩人の恋』
エストニア出身のピアニスト、クリスチャン・ランダル(Kristjan Randalu)の新作『Dichterliebe』は、ロベルト・シューマン(1810 - 1856)の連作歌曲『詩人の恋』の新たな解釈であると同時に、この古典的名作をより情感豊かにスケールアップした傑作だ。
エストニア出身のピアニスト、クリスチャン・ランダル(Kristjan Randalu)の新作『Dichterliebe』は、ロベルト・シューマン(1810 - 1856)の連作歌曲『詩人の恋』の新たな解釈であると同時に、この古典的名作をより情感豊かにスケールアップした傑作だ。
ザ・カインドネス(The Kindness)はアメリカ合衆国アイダホ州を拠点とするピアノトリオで、リーダーであるベース奏者アーロン・ミラー(Aaron Miller)はブリガム・ヤング大学(BYU-Idaho)の教員でもあるそうだ。彼らのデビューアルバム『The Kindness』は、そうした知識が全くない状態で聴き始めたが、暗闇に徐々に煙が立ち込めるような印象的なイントロで始まる(1)「How Did the Rose」でのエスビョルン・スヴェンソン・トリオ(e.s.t.)を彷彿させる演奏に、すぐに惹き込まれた。
2021年に颯爽とデビューしたアイスランド・レイキャビク出身のピアニスト/シンガーソングライター、アンナ・グレタ(Anna Gréta)が待望のACT発第二弾アルバム『Star of Spring』をリリースした。現在ストックホルムに住む彼女が故郷アイスランドに想いを寄せて弾き語る曲はどれも美しく、特別だ。
前作『Andalusian Love Song』(2022年)では地中海を取り囲む諸国の出身者による多国籍ラージアンサンブルを率い刺激的なエンターテインメントを提示したイスラエル出身の作曲家/鍵盤奏者アヴィシャイ・ダラシュ(Avishai Darash)が、今度はピアノトリオにトランペットを加えたカルテットによるアルバム『Between Hope and Despair』をリリースした。
グアドループ出身のドラムス奏者アーノウ・ドルメン(Arnaud Dolmen)と、ブラジル出身でグアドループに移り住んだピアニスト、レオナルド・モンタナ(Leonardo Montana)によるデュオ・アルバム『LéNo』がリリースされた。ピアノとドラムスのデュオ編成だが、カリブ海のクレオール・ジャズのグルーヴが渦巻き、グウォカの洗礼を受けたユニークなドラミングとピアノ、そして2人のコーラスが有機的に絡み合う演奏は圧巻。一般的に想像される“ジャズ”とはまた違った世界の、唯一無二の音楽体験を与えてくれる絶品となっている。
南アフリカ・ケープタウンを拠点とする7人編成のジャズバンド、クジェンガ(Kujenga)。スワヒリ語で“構築する”を意味するバンド名を持つ彼らの2枚目のアルバム『In the Wake』がリリースされた。トランペット、トロンボーン、テナーサックスの3管や電化ギター、ベースなどよくあるジャズ編成ではあるものの、アフリカ南部のアイデンティティを感じさせる力強いサウンドがとても素晴らしいアルバムだ。
ミナスのほかの多くの若手器楽奏者たちの例に漏れず、非常に複雑かつ瑞々しい音楽を作り出す女性ピアニスト/作曲家イガーラ(IGARA)。2021年にBDMGヤング・インストゥルメンタル(BDMG Jovem Instrumentista 2021)を受賞し、その後2023年にミナスの器楽音楽で最も意味のある賞である第22回BDMGインストゥルメンタル(BDMG Instrumental 2023)を受賞した彼女のデビューEP『O Piano, os Cavalos e o Mar』は、哲学や文学の香りをも感じさせる非常に美しい作品だ。
アルゼンチン出身のソプラノ歌手マリアナ・フローレス(Mariana Flores)が、同じくアルゼンチンのマルチ奏者キト・ガト(Quito Gato)との共同プロジェクトでアルゼンチン音楽集『Alfonsina: Canciones Argentinas』をリリースした。(1)「Alfonsina y el Mar」や(10)「Dorotea, la Cautiva」などの名曲をシンプルかつ豊かな伴奏と美しいヴォーカルで聴かせる好盤だ。
ブラジルのピアニスト/作曲家アマロ・フレイタス(Amaro Freitas)の新作『Y'Y』は、彼らの文化の根源のひとつであるブラジル北部のアマゾンや先住民族への深い敬意に満ちた表現が印象的だ。アルバムの前半はピアノ(そして声やパーカッション)を通して自己の内面と自然(nature)を繋ぎ対話する内省的な試みであり、後半ではブラジル国外の素晴らしいゲストも迎え、アフロ・ブレジレイロとしての表現を世界に広く解放し共有する。
アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイス出身のピアニスト、ローレンス・フィールズ(Lawrence Fields)が自身のピアノトリオを率いて、初リーダー作『To the Surface』をリリースした。アルバムのタイトルには彼がこれまで何年にもわたって蓄積してきたアイデア、サウンド、楽曲を文字通り表面に浮かび上がらせることを表している。
ウクライナ・オデーサ出身のピアニスト/作曲家アンドリュー・ポカズ(Andrew Pokaz)率いるピアノトリオ、ポカズ・トリオ(Pokaz Trio)が5年ぶりの2ndアルバム『Voices』をリリースした。ご存知のように2022年2月24日以降ロシアによる激しい攻撃を受け、大きな困難に直面した彼らが今作で掲げ、渇望するのは祖国ウクライナの自由に他ならない。
ブラジル随一のピアニスト、アンドレ・メマーリ(André Mehmari)が新しいソロピアノ・アルバム『Sombra e Luz』をリリースした。これはショーロ黎明期の作曲家マルセロ・トゥピナンバ(Marcello Tupynamba, 1889 - 1953)の作品集で、これまでに作家単体をテーマとしたアルバムとしてはエルネスト・ナザレー作品集『Ouro Sobre Azul – Ernesto Nazareth』(2014年)やノエル・ホーザ作品集『Noël: Estrela da Manhã』(2020年)に続くものとなる。
2019年に音楽活動に復帰して以来、驚異的なペースで次々と傑作アルバムをリリースし続けているイスラエルのベーシスト、ヨセフ・ガトマン(Yosef Gutman)が新作『The World And Its People』をリリースした。今作は完全アンプラグドなベース、ギター、ピアノ、チェロの四重奏編成で、彼らしく素朴で温かな眼差しが感じられる優しい音楽に仕上がっている。
カタルーニャのシンガーソングライター、カロリーナ・アラバウ(Carolina Alabau)の第3作目となる『Una Frase Imaginada』。プロデューサー/ギタリストのハビエル・リモン(Javier Limón)と共同作業で作り出したこの傑作は、複雑すぎる社会の中で生きていく彼女の不安が、その繊細な表現を通じて霧のように目の前に存在しているような不思議な感覚を抱かせる。