マシャ・ガリビアン新作『驚異的な女性たち』
アルメニア系フランス人ピアニスト/歌手/作曲家のマシャ・ガリビアン(Macha Gharibian)が、新作『Phenomenal Women』をリリースした。今作は、米国の偉大な詩人/歌手マヤ・アンジェロウ(Maya Angelou, 1928 – 2014)の1987年ロンドンでのスピーチ/パフォーマンスにマシャ・ガリビアンが大きな感銘を受けたことがクリエイティヴなエネルギーの源となっている。タイトルの“驚異的な女性たち”はまさにそのスピーチの中に登場した言葉で、この偉大な女性を讃え、女性たちの戦い──女性が耐え忍ばなければならない暴力、そして性差別や平等に対する戦い──への彼女なりの強い信念を表明している。
アルバムには実に多様な楽曲が収録されている。13曲のうち10曲がオリジナル、3曲がカヴァーという構成で、歌詞は英語、アルメニア語、フランス語、ポルトガル語、アラビア語と5ヵ国語で歌われている。音楽のジャンルとしてはジャズ、フォーク・ミュージック、ソフトロック、アルメニアやアラブの伝統音楽といった様々な要素が登場する。彼女のヴォーカルはニーナ・シモン(Nina Simone)、ジーン・リー(Jeanne Lee)、ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)といったナチュラルなヴォーカリストに影響を受けており、誇張のないオーガニックな歌唱が良い。
キャッチーな曲調に高速スキャットが乗る(2)「Mana Mana」、思索的でアンニュイな(4)「Survoler La Lune」。
アルメニアの伝統曲である(5)「Nare Nare」、さらにはブラジルのSSW、ジャヴァン(Djavan)の名曲のカヴァーでブラジル・ポルトガル語で歌われる(6)「Nobreza」。
今作で最長、6分38秒の(8)「Phenomenal Women」は特筆すべき芸術的な曲で、楽曲を特徴付けるシンセの音色や感情を揺さぶるパーカッション、言葉にならない機微を乗せたスキャットなど聴き甲斐を感じさせる。
(12)「Ya dirati」はシリア系エジプト人のSSWファリド・アル=アトラシュ(Farid al-Atrach, 1910 – 1974)のカヴァーで、神秘主義的な表現がマシャ・ガリビアンの音楽的な多彩さを体現している。
Macha Gharibian – lead vocals, piano, Fender Rhodes
Lea Maria Fries – vocals
Linda Oláh – vocals
Isabel Sörling – vocals (3)
Dré Pallemaerts – drums
Sylvain “Kenny” Ruby – electric bass, keyboards