『百年の孤独』にインスパイアされたテーム・インパラ新譜
オーストラリアのサイケロック・バンド、テーム・インパラ(Tame Impara)の5年ぶり新作『The Slow Rush』がリリースされた。
(1)「One More Year」から(12)「One More Hour」までの全12曲は、コロンビアのノーベル文学賞作家ガルシア・マルケスの名作小説『百年の孤独』にインスパイアされた、“時間の流れ”をテーマとして明確に提示したコンセプチュアルなアルバムとなっている。
サウンド面ではサイケロック、AOR、ダブ、エレクトロニカといった要素を一直線に結ぶそのスタイルがやはり強烈なインパクトを残す。シンプルでありながら、強く耳に訴える音楽。レトロな雰囲気なのにしっかり“今”の音。ドラムスとベースのリズムは重く、浮遊感のあるキーボードや過剰とも思えるリヴァーブが効いたヴォーカルには独特のいなたさと洗練が同居する。なんとも不思議な音楽である。
ライヴでは5人組のバンドとして活動しているテーム・インパラだが、実質ケヴィン・パーカー(Kevin Parker)のソロプロジェクト。スタジオアルバムではケヴィン・パーカーが全ての楽器を演奏し、サウンドプロダクションも行っている。どの楽器も決して演奏力に秀でているわけではないし、歌唱力もごく普通。だからこそ音響処理も含めトータルで表現する必然性が生まれ、その結果もはや現代ロックの頂点とも言われるほどの人気を持つテーム・インパラの音楽が生まれたわけだが、本質は極めて個人的で内省的なアウトサイダー・アートなのだ。