ブラジル音楽の歴史に燦然と輝くノヴォス・バイアーノス名盤『アカボウ・ショラーレ』

Os Novos Baianos - Acabou Chorare

後世に多大な影響を与えたブラジリアン・サイケロック、ノヴォス・バイアーノス

サンバやボサノヴァなどのブラジル音楽とサイケデリック・ロックを融合し、1970年代に独自の存在感を放ち後世に多大な影響を与えたブラジルの伝説的バンド、ノヴォス・バイアーノス(Os Novos Baianos)
バイーア州サルヴァドールで結成後間もない、まだバンド名のなかった1969年に「V Festival de Música Popular Brasileira」というフェスティバルに参加した彼らは、そのプロデューサーから“新しいバイーア人(=Os Novos Baianos)”と紹介されそれをそのままバンド名に採用。1970年のデビュー作『É Ferro na Boneca!』から1979年の解散まで、活動期間は短かったもののブラジル音楽に革新的な影響をもたらしたサイケロック・バンドである。

メンバーはガットギター/ヴォーカル、そしてほとんどの曲を作曲したモラエス・モレイラ(Moraes Moreira)、ヴォーカルのパウリーニョ・ボカ・ヂ・カントール(Paulinho Boca de Cantor)、ヴォーカル/パーカッションのベイビー・コンスエロ(Baby Consuelo)、そして作詞のルイス・ガルヴァォン(Luiz Galvão)。
このオリジナルメンバーに加え、代表作となる1972年の2nd『Acabou Chorare』からヴォーカルのベイビーと1970年に結婚していたペペウ・ゴメス(Pepeu Gomes)が正式加入し、さらにそのペペウ・ゴメスのバンド「A Cor do Som」のメンバー(のちにジョルジ・ベンの名盤に多数参加することになるベーシストのダヂ(Dadi)もこのバンドにいた)が補助バンドとして帯同する形となりノヴォス・バイアーノスのサウンドの核が形成される。

2ndアルバムの録音後、メンバーはリオデジャネイロ州のヴァルジェン・グランデにあるガレージのコミュニティに移り住み、共同生活をしながら音楽とサッカーに明け暮れた。

永遠の瑞々しさを放つ名盤『Acabou Chorare』

彼らの作品の中でまず最初に聴くべきは2ndアルバム『Acabou Chorare』(1972年、通称『赤帽』)だろう。2007年にローリング・ストーン・ブラジル誌によってブラジル史上の名盤ベスト100の1位に輝いた本作は、ブラジル音楽らしい独特の半音の使い方やサンバのリズムが特徴的な(1)「Brasil Pandeiro」、アルバムを強く印象付ける(2)(9)「Preta Pretinha」、ブラジルのサイケロックを代表する(3)「Tinindo Trincando」、(7)「A Menina Dança」などどこから聴いても名曲揃い。エネルギーに満ち、音楽に没頭した若者たちの生命力と感性が爆発した生々しい音楽だ。

この2ndアルバム以降の彼らのサウンドに強く影響を与えたのが“ボサノヴァの神様”ジョアン・ジルベルト(João Gilberto)といわれている。サイケロック色が濃く未熟なサウンドの1stアルバムから、2ndアルバムではアコースティックの比重が高まり、同時にサンバやボサノヴァのリズムも大胆に吸収され、音楽史に残るこの革新的なサウンドが築き上げられた。

オス・ノヴォス・バイアーノスを代表する名曲「A Menina Dança」の1972年の演奏動画。

(1)「Brasil Pandeiro」はそのジョアン・ジルベルトも後にレパートリーに取り入れている。モラエス・モレイラのギター、女声、男声ヴォーカルが交互に絡む歌唱、中盤部からはカヴァキーニョやパンデイロといったブラジル特有の楽器での演奏が生み出すグルーヴが最高だ。

表題曲である(5)「Acabou Chorare」はジョアン・ジルベルトの影響を強く感じさせる、ほぼガットギターと声のみでの録音だが、複雑に動くコード進行にモラエス・モレイラの底知れない才能がほとばし名曲。

フロントの二人のギタリストの卓越した演奏センス、あどけなさも魅力のベイビー・コンスエロをはじめメンバー4人が交互にヴォーカルを取るスタイル、サンバのエッセンスが巧みに取り入れられたロックサウンドは約半世紀を経ようとしている今聴いても決して色褪せず、むしろ新鮮ささえ感じさせる。
ノヴォス・バイアーノスにはそんな不思議な魅力がある。

軍事政権下で自由な共同生活を行い、音楽とサッカーに明け暮れていたノヴォス・バイアーノスのドキュメンタリー映像。

衰えを見せぬ再結成ライヴ

1970年代の中頃にはモラエス・モレイラ、ダヂといった中心メンバーがソロ活動のため脱退。バンドは立て直しをはかるが叶わず、1979年に解散した。
だがその後もオリジナルメンバーが集うことは度々あり、2016年〜2017年にかけて結成から約半世紀の時を経ても衰えないノヴォス・バイアーノスを強く印象付ける再結成コンサートも行われ、『Acabou Chorare』での楽曲を中心に演奏。世代を超えて熱狂的に迎えられた。

2017年に行われた再結成ライヴで披露された「Brasil Pandeiro」
年をとってもなおその輝きを失わないバンドのパワーに圧倒される。
再結成ライヴでの「A Menina Dança」
彼らがレジェンドたる所以が再確認できるライヴだ。
Os Novos Baianos - Acabou Chorare
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