知的な快楽の遊び。デンマークの女流ベーシスト、アンネ・メテ・イヴェルセン新譜

Anne Mette Iversen - Racing a Butterfly

デンマーク出身ベーシスト、Anne Mette Iversen『Racing a Butterfly』

デンマーク出身のベーシスト、アンネ・メテ・イヴェルセン(Anne Mette Iversen)の新譜『Racing a Butterfly』(2020年)は、彼女が2002年にニューヨークで結成したレギュラーカルテット“Anne Mette Iversen Quartet”にトロンボーンを加えた編成で録音された同バンド9枚目のアルバム。「これまでで最も幸せでリラックスしたアルバム」と彼女が語るとおり、緻密な作曲・アレンジでありながらも長年活動をともにしてきた仲間たちとの信頼感に裏打ちされた誠実で心地よいグルーヴに溢れた良作だ。

アルバムは全曲がアンネ・メテ・イヴェルセンの作曲だが、実際の演奏では彼女が前面に出て目立つようなことは少なく、ベーシスト本来の持ち分である低域でサウンドを支え、引き締める役割に徹している。ベーシストがリーダーのバンドでこうした演奏はなかなか珍しい。
テーマのメロディはテナーサックスのジョン・エリス(John Ellis)やピアノのダニー・グリセット(Danny Grissett)、トロンボーンのピーター・ダールグレン(Peter Dahlgren)が担うことになるわけだが、これもまた誰かひとりで主旋律を奏でるというよりかはアンサンブルによるハーモニーの響きや対旋律を主軸にしており、この辺は作編曲家としてのアンネ・メテ・イヴェルセンの才能を感じられるところだ。彼女の音楽をもう少し大きな編成で聴いてみたいという欲が出てしまう。

曲中で様々な情を見せる(2)「Racing a Butterfly」
(7)「Cluster」のMV。
後半のオーティス・ブラウン三世のドラムソロも聴きどころ。

アンネ・メテ・イヴェルセン(Anne Mette Iversen)は1972年デンマーク生まれの作曲家/ベーシスト。デンマーク王立音楽院でクラシックピアノを専攻、コペンハーゲンのリズミック音楽院でベースを学んだ。

彼女の作品にはクラシック、ジャズ、ブラジル音楽などの影響が伺え、特にジャズアンサンブルにおける知的で優美な編曲には定評がある。

1998年から2012年までニューヨークで活動し、現在はドイツのベルリンを拠点にしている。

Anne Mette Iversen – bass
John Ellis – tenor saxophone
Danny Grissett – piano
Otis Brown III – drums
Peter Dahlgren – trombone

Anne Mette Iversen - Racing a Butterfly
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