ティム・ガーランド&ジェフリー・キーザー 『Mezzo』
英国のサックス奏者ティム・ガーランド(Tim Garland)と、米国のピアニストのジェフリー・キーザー(Geoffrey Keezer)のデュオによる新譜『Mezzo』。注目は、ティム・ガーランドが吹く極めて希少なメゾソプラノサックスだ。この楽器はデンマークの現代の名工ペーター・イェッセン(Peter Jessen)製の世界にわずか20本程度しかないサックスのうちの1本で、通常のソプラノサックスとアルトの中間の音域を持つ。コーラングレのような温かみのある低音から、フリューゲルホルンのような力強い中音域まで、独特のトーンが魅力の楽器だ。
演奏している曲は主にティム・ガーランドのオリジナルで、いくつかのカヴァーも。中でも特筆すべきはやはりチック・コリア(Chick Corea, 1941 – 2021)の(1)「La Fiesta」と、エリック・サティ(Éric Satie, 1866 – 1925)の(2)「Gnossienne」だろう。それぞれジェフリー・キーザーによる自由で独創的なリハーモナイズが施されており、編曲の妙、ピアノとサックスの絶妙な絡み合いなど聴きどころが満載。コール・ポーター作曲の名曲(7)「Every Time We Say Goodbye」も素晴らしい。
ティム・ガーランドはアルバムの9曲のうち、7曲でG管のメゾソプラノ・サックスを使用。残り2曲、(5)「Carousel」と(8)「Ghost in the Photograph」では一般的なソプラノサックス(B♭管)を使用している。それぞれの楽器の聴き比べも面白い。
Tim Garland 略歴
ティム・ガーランドは1966年イギリス・エセックス州イルフォード生まれ。ケント州カンタベリーで育ち、最初にクラリネットとピアノから始め、15歳でサクソフォーンに転向し、ギルドホール音楽演劇学校でジャズとクラシック作曲を学んだ。
1988年に初リーダー作『Points on the Curve』をリリースし、Lammas、Storms/Nocturnes、Lighthouse Projectなどのグループを率いて活動。ロニー・スコットやラルフ・タウナーとの共演を経て、1990年代後半にチック・コリアのOriginバンドに加入し、16年以上にわたり断続的にコラボレーションを行ったほか、ビル・ブルフォードやジョン・ダンクワースのバンドにも参加している。
ロイヤル・ノーザン・シンフォニアやBBCコンサート・オーケストラからの委嘱を受け、2013年に『Songs to the North Sky』をジャズ・トリオとオーケストラで初演するなど、現代ジャズとクラシックの融合に力を注いでいる。2006年にCross-Parliamentary Jazz SocietyからMusician of the Yearに選ばれ、2009年にはチック・コリア&ゲイリー・バートンの『The New Crystal Silence』でオーケストラの編曲を担当し、グラミー賞を受賞した。
Geoffrey Keezer 略歴
ジェフリー・キーザーは1970年アメリカ合衆国ウィスコンシン州オークレア生まれ。両親が音楽家である家庭に育ち、3歳からピアノを始め、ティーンエイジャー時代からジャズクラブで演奏活動を開始した。
1989年に18歳でアート・ブレイキー率いるジャズ・メッセンジャーズの最後のピアニストとして加入し、ブレイキーの死まで在籍した後、ジョシュア・レッドマン、ベニー・ゴルソン、レイ・ブラウンらとツアーを行い、20代でArt Farmer Quartetの音楽監督を務めた。
1997年からはRay Brown Trioのメンバーとして世界各地で活躍し、2002年からはティム・ガーランド、ジョー・ロックとのStorms/Nocturnesトリオに加入して長年の音楽的友情を築いている。2023年にはインストゥルメンタル作曲部門でグラミー賞を受賞したほか、複数のグラミー賞ノミネート歴を持ち、ジュリアード音楽院で教鞭を執りながら、クリス・ボッティやデイヴィッド・サンボーンなど幅広いアーティストとの共演やソロ活動を通じて、ジャズの伝統を現代的に発展させ続けている。
Tim Garland – mezzo-soprano saxophone, soprano saxophone
Geoffrey Keezer – piano