繊細で美しい、欧州を代表する3人による国籍を超えた室内楽ジャズ
ポーランドのジャズ・ヴァイオリン奏者、アダム・バウディヒ(Adam Baldych)、フランスのチェロ奏者ヴァンサン・クルトワ(Vincent Courtois)、そしてオランダのピアニスト、ロヒール・テルダーマン(Rogier Telderman)のトリオによる『Clouds』。
ドラムレスの室内楽的なアンサンブルで、それぞれの楽器の演奏・音色がどこまでも繊細で素晴らしく、楽器の匂いまで伝わってくるような臨場感がある。短調の曲が多いが暗さはなく、徹底的に美しい。
アダム・バウディヒはいくつかの曲で通常のヴァイオリンよりも一回り大きく、7度低く調弦されたルネサンス・ヴァイオリンを使っている。(6)「And So」、(7)「Interlude」や(9)「In Love in Hanoï」などでの印象的な深みのあるアルコ(弓弾き)やピチカート(指弾き)は、そのルネサンス・ヴァイオリンによるものだ。
このトリオは2018年2月にオランダ南部の都市ブレダで初開催されたフェスティヴァル、Sounds of Europe Festival の音楽監督が、ピアニストのロヒール・テルダーマンに新しいバンドの企画を依頼。テルダーマンがアダム・バウディヒとヴァンサン・クルトワを招待することを選択し実現したトリオだという。
彼らはフェス本番直前の1日間だけリハーサルを行ったが、その時既に「このプロジェクトはもっと頻繁に行うべきだ」と全員が考え、今回のアルバムリリースに至っている。
プロフィール
ヴァイオリンのアダム・バウディヒは1986年ポーランド生まれ。幼少期より才能を見せ、9歳の頃には既に将来音楽学校で学ぶことを決めていたという。
13歳でジャズに傾倒、16歳の頃よりプロとしての活動を始め“ジャズヴァイオリンの革新者”として世界にその名を轟かせた。
2012年に権威あるドイツのレーベル、ACT MUSICからデビュー作『Imaginary Room』を発表。ヴァイオリンという楽器が持つポテンシャルを限界まで高める圧倒的な表現力を備えた現代最高峰の演奏家として評価されている。
チェロのヴァンサン・クルトワは1968年フランス生まれ、今回のトリオでは最年長。
1990年に『Cello News』でデビュー。表現の幅はクラシックから現代音楽、ジャズなど幅広く、これまでにフランスを代表する木管奏者ルイ・スクラヴィス(Louis Sclavis)やアラビック・ジャズのラビ・アブ=カリル(Rabih Abou-Khalil)などと共演してきた。
ピアノのロヒール・テルダーマンは1982年オランダ生まれ。
2010年にジャズの自由性をソウルやロックに持ち込んだバンド、メルフィ(Melphi)を結成、オランダで数多くのツアーを行い高く評価された。
2014年にピアノトリオでのデビュー作『Contours』をリリース。
2016年にはオランダで最も才能のある若いジャズアーティストとして、Young VIP-award を受賞している。
Adam Bałdych – violin, renaissance violin
Vincent Courtois – cello
Rogier Telderman – piano