北欧ジャズ×和楽器・箏の異色の美コラボ。『Poems for Orchestra』

Anders Jormin, Lena Willemark & Karin Nakagawa - Poems for Orchestra

箏/ベース/ヴァイオリン・歌の異色ジャズトリオ、ビッグバンドとの共演作

スウェーデンのベーシスト、アンダーシュ・ヤーミン(Anders Jormin)と、同じくスウェーデンのヴァイオリニスト/歌手のレーナ・ヴィッレマルク(Lena Willemark)、そして日本の二十五絃箏奏者の中川果林(Karin Nakagawa)の3人による北欧と和文化の融合したECM傑作『Trees of Light』(2015年)の続編ともいえるのがこの2019年作『Poems for Orchestra』

前作は3人のみでの演奏で、ヴォーカルとことが大きくフィーチュアされ東洋的な印象を強く与えていたが、今回は北欧を代表するビッグバンドであるボーヒュースレン・ビッグバンド(Bohuslän Big Band)との共演となっており東洋的・日本的な雰囲気は薄まってはいるものの、その分ジャズ色が強く出ている。

全曲がベーシストのアンダーシュ・ヤーミンの作曲で、北欧らしく詩的で美しい曲と演奏。
(7)「Hirajoshi」や(12)「Dröm」は前作でも収録されていた曲なので、トリオとビッグバンドでの違いを聴き比べるのも楽しい。

美しすぎるオープニング(1)「Ogadh dett」。
中川かりんの箏で始まり、次のベースとヴォーカルが、そして少しずつビッグバンドが絡んでくる。

ビッグバンドでも埋もれない箏の存在感

やはり今作でも中川果林の弾く二十五絃箏は強い存在感を放っており、これがこの作品を個性的にする決め手のスパイスになっている。

箏のげんは通常13本だが、中川かりんの楽器は古楽だけでなく近代的な楽曲の演奏をしやすくするために絃の数を合計25本としたもので、伝統的な箏に対し「新箏」と呼ばれるものの一種。箏曲家の野坂惠子(1938年 – 2019年)が1991年に開発し広まっている。

1979年に音楽家の両親のもと茨城県に生まれた中川果林は、その二十五絃箏で西洋音楽と日本の音楽を繋ぐ活動を行っている。
その結果が、前述したヨーロッパ最高峰のジャズレーベルであるECMからリリースされた『Trees of Light』であり、今回の『Poems for Orchestra』だ。

ビッグバンド編成の今作の中では彼女の箏は音色の似ているハープのように振舞うが、(1)「Ogadh dett」や(2)「En gång skall du」、(7)「Hirajoshi」などハープという楽器では不可能な音程のベンドなど、随所に和楽器らしさが現れていながら、それが西洋のジャズバンドにも自然に馴染んでしまっているのが素晴らしいと思う。

Anders Jormin – double bass
Karin Nakagawa – 25 strings koto
Lena Willemark – vocals, violin

Bohuslän Big Band :
Martin Svanström – alto saxophone, clarinet, flute
Joakim Rolandson – alto saxophone, soprano saxophone, flute
Alberto Pinton – baritone saxophone, flute, bass clarinet
Yasuhito Mori – bass (5, 6, 11, 13, 14)
Ingrid Utne – bass trombone
Göran Kroon – drums
Stefan Wingefors – piano
Ove Ingemarsson – tenor saxophone
Mikael Karlsson – tenor saxophone, flute, alto flute (8)
Christer Olofsson, Hanne Småvik, Niclas Rydh – trombone
Jan Eliasson – trumpet, flugelhorn (4)
Lennart Grahn- trumpet, flugelhorn (3)
Samuel Olsson, Staffan Svensson – trumpet, flugelhorn

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