コロンビアのSSWマルタ・ゴメス『La alegría y el canto』
コロンビア出身の女性シンガーソングライター、マルタ・ゴメス(Marta Gómez)による美しい曲と歌声が至福の時間を与えてくれるアルバム『La alegría y el canto』。マルタ・ゴメス自身はヴォーカルとギターを弾き、そのお供はドラムレスの小編成のアコースティック楽器たち。乾いた弦楽器の音やフルート、ピアノなどが丁寧に作曲された音楽を彩る。極上の音楽とはまさにこのこと!
アルバムに収録された17の楽曲群はそれぞれ異なるアーティストがゲスト参加しており、マルタ・ゴメスの美しく深みのある声を軸にしながら、それぞれの曲が異なる表情をみせる。ゲストもチリのSSWナノ・スターン(Nano Stern)や、イラケレで活躍したキューバン・ジャズの巨匠セサル・ロペス(César López)などスペイン語圏を中心に様々。
アルバムはモロッコとスペインをルーツに持つアルゼンチン在住のセファルディの女性歌手、ヘオルヒーナ・アッサン(Georgina Hassan)を迎えた(1)「Tierra movida」で幕を開ける。シンプルな三拍子のギターのアルペジオとジャジーで軽やかなピアノのみの伴奏で歌う二人の女性歌手のハーモニーがこの上なく美しい名曲だ。
(2)「La raiz」はコロンビアの4弦ギター“クァトロ”とベース、フルートのトリオであるグァーファ・トリオ(Guafa Trio)との共演で、南米のフォルクローレらしい哀愁を帯びた弦の音が胸を打つ。
スペインのベテランSSWであるペドロ・ゲーラ(Pedro Guerra)を迎え2本のギターを伴奏にデュエットする(7)「Un día」のメロディも美しい。
(8)「Lo innombrable」はスペインの有名なキャラクター“ローラ・バンディッタ”の生みの親でもある漫画家/歌手のラケル・リバ・ロッシー(Raquel Riba Rossy)が参加。フラメンコの要素も感じさせるパルマ(手拍子)も交え、マルタ・ゴメスとの親密な掛け合いが繰り広げられる。
(11)「Y si regresas otra vez」ではイスラエルを代表するSSWイダン・ライヒェル(Idan Raichel)が参加し、深淵な趣のピアノにのせてスペイン語で歌うマルタ・ゴメスとヘブライ語で歌うイダンとの対比も美しい。マルタ・ゴメスはイダン・ライヒェルが2000年代初頭に開始した世界各国のミュージシャンを迎えたプロジェクト、The Idan Raichel Project の3枚目のアルバム『Within My Walls』に参加しており、その縁がきっかけとなって今回の再共演にも繋がったようだ。
多くの素晴らしいアーティストと共に作り上げた「喜びと歌」というアルバムタイトル通りに、音楽を奏でたり歌うことの喜びや幸せに満ちた素晴らしい傑作。