現代最高の作曲家キャロライン・ショウ、革新的パーカッション集団と奏でる至高の音楽

Caroline Shaw & Sō Percussion - Let the Soil Play Its Simple Part

想像を絶する“声とパーカッション”の芸術

グラミー賞受賞作曲家/歌手のキャロライン・ショウ(Caroline Shaw)と、ブルックリンを拠点に活動する打楽器集団ソー・パーカッション(Sō Percussion)の共演作『Let the Soil Play Its Simple Part』はクラシックや現代音楽に分類されてはいるが、その範疇にとどまらない驚くべき作品だ。

基本的にキャロラインの声とパーカッションのアンサンブルのみによる音楽だが、彼らの“パーカッション”の定義の範囲は電子音やアンプのハム、ピアノの弦を叩く音などにまで及ぶ。

打楽器というと音程感のないドラムスや太鼓といった楽器類を思い浮かべる方が多いと思うが、鉄琴や木琴、ヴィブラフォンだって普通に打楽器の分類だし、なんならピアノだって鍵盤を鍵盤を押さえるとハンマーが弦を打つ打弦楽器…つまり弦を打つ広義の打楽器なのである。
電子楽器がどういう理屈で打楽器になるのかはよく分からないが、ソー・パーカッションに至ってはとにかくそういうノリで打楽器というものを捉えているようだ(好き)。

(1)「To the Sky」

シンガーとしてのキャロライン・ショウのターニング・ポイント

これまでにヴォーカル・グループ“Roomful of Teeth”の一員としても活動してきたキャロライン・ショウだが、ソロ・ヴォーカリストとしての作品は今回が初めてのようだ。
今作での幾重にもオーヴァーダビングされた彼女の声は明らかに新たな側面を映し出しており、“クラシック”や“現代音楽”というカテゴライズを飛び出し飛躍するには最高の選択をしたと思わせられる。

アルバムのほとんどの曲は勿論キャロライン・ショウのオリジナルだが、ABBAの曲のカヴァーである(5)「Lay All Your Love On Me」は特筆すべきだ。原曲の懐かしさが勝るディスコ・ポップから、マリンバと天上の声が響く美しい讃美歌へと驚異的な変貌を遂げさせた彼女の才には感嘆するしかなかった。

音楽の原点はリズムだと言われるように、パーカッションというリズムそのものの楽器をフィーチュアすることで、とかく上品なだけに至りがちな弦楽器を中心としたアンサンブルと比べ生命の躍動に溢れた音楽を創出していることは今作の大きな特徴だろう。

(2)「Other Song」

Apple Musicでは本作はドルビーアトモスによる空間オーディオに対応しており、AirPods Proなどの対応機器では迫力ある立体的なサウンドを楽しむこともできるのも嬉しいところだ。

革新的な作曲家と、日本語「奏」に由来する打楽器集団 略歴

キャロライン・ショウ(Caroline Shaw)は1982年生まれの作曲家/ヴァイオリン奏者/歌手。
母親の指導のもと2歳からヴァイオリンを始め、10歳頃からモーツァルトやブラームスの室内楽を模倣しながら曲を書き始めた。幼少時は医者で音楽好きの父親が弾く子守唄代わりの奇妙なピアノ──彼はメトロノームのリズムから外れたまま弾き続けるという特異な(?)才能を持っていた──の素晴らしいポリリズムを直したいと思いながら眠りについていたという。
2013年にヴォーカル・アンサンブル・グループ“Roomful of Teeth”名義の独創的なアカペラ作品『Partita for 8 Voices』(8声のためのパルティータ)でピューリッツァー賞を最年少(30歳)で受賞。
2020年にはアルバム『Orange』でグラミー賞の最優秀室内楽・小編成アンサンブル・パフォーマンス賞を受賞した。

ソー・パーカッション(Sō Percussion)は1999年にニューヨークで結成された打楽器奏者4人組のグループ。
グループ名の「Sō」は日本語の「奏」に由来し、これはメンバーのジェイソン・トロイティング(Jason Treuting)の姉妹の発案とのこと。2004年にアルバム『So Percussion』でデビュー、以降ジャンルを超えて様々な作曲家やバンドなどと共演を行ないながら20枚以上のアルバムをリリース。多岐にわたる音楽性は“精密さと無秩序、厳格さと荒々しさ”と評されている。キャロライン・ショウとの共演は2021年初頭リリースの『Narrow Sea』以来となる。

Caroline Shaw – vocals

Sō Percussion :
Josh Quillen
Adam Sliwinski
Jason Treuting
Eric Cha-Beach

Caroline Shaw & Sō Percussion - Let the Soil Play Its Simple Part
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