歴史あるアルメニア国立ジャズオーケストラ、同国伝統音楽を絢爛なアレンジで聴かせる新譜

State Jazz Orchestra of Armenia - Menq U Munq

アルメニア国立ジャズオーケストラによるアルメニアン・ジャズ新譜

ティグラン・ハマシアンの登場などで近年注目されるアルメニアのジャズ界から、今回は面白いビッグバンドを紹介したい。ステイト・ジャズ・オーケストラ・オブ・アルメニア(State Jazz Orchestra of Armenia)はその名の通りアルメニアの国立ジャズオーケストラ。1938年にチェリスト/作曲家のアルテミ・アイワジアン(Artemy Ayvazyan)の指揮のもと創立され、旧ソ連全土で公演を行い広く愛されてきた。特に1956年から36年間オーケストラの指揮を執ったピアニスト/作曲家のコンスタンティン・オルベリアン(Constantine Orbelian)のもとで米国、ヨーロッパ、アラブ圏などでも演奏をし国際的な認知度を上げている。90年代に入ると紛争などの深刻な情勢のため一時的に活動は中断されたが1997年に再開し、優れた音楽家たちによって現在までアルメニアのジャズ文化の拡大と発展に寄与し続けている。

彼らがレパートリーにしているのは米国などで生まれたジャズのスタンダードのほか、アルメニアの作曲家の作品や伝統音楽など。曲によってはアルメニアの伝統楽器が用いられることもあり、それらが彼らの特色として音楽的にもとても良い効果を生んでいる。

そんな彼らの2021年の新譜が『Menq U Munq』。全曲がアルメニアの作曲家によるものであり、何世紀にもわたるアルメニアの音楽の伝統を新しい解釈で現代に蘇らせている。

躍動感のあるイントロで始まる(1)「Toccata」はピアニスト/作曲家アルタシェス・カルタリャン(Artashes Kartalyan, 1961 – )はジャズのスウィング感、アルメニア音楽の変拍子や異国情緒溢れる旋律など幾重にも折り重なる音楽の展開が秀逸で、ビッグバンドによる洪水のような音を浴びるのがとても気持ちいい演奏だ。

(1)「Toccata」

アルメン・ヒュスナンツ(Armen Hyusnunts, 1966 – )作曲の(3)「Festive」などではアルメニアを代表する管楽器、ドゥドゥクのソロも。

(5)「Habrban」はアルメニア近代音楽を確立した作曲家コミタス(Komitas Vardapet, 1869 – 1935)の作曲。原曲は非常に厳かでクラシカルな雰囲気の曲だが、ここではエレクトリック・ギターのソロもあるなど現代的な高揚感のあるアレンジとなっている。

アルメニアの民俗音楽を取り入れた曲を書き続けたアレクサンドル・アルチュニアン(Alexandr Harutyunyan, 1920 – 2012)作曲の(6)「Caravan」や、ピアニスト/作曲家のバハグン・ハイラペティアン(Vahagn Hayrapetyan, 1968 – )による(7)「Good Thing」は今作の中でも特に伝統音楽色が強い。

(8)「Lullaby」はおそらくアルメニア人としては最も国際的に名前を知られている作曲家、アラム・ハチャトゥリアン(Aram Khachaturyan, 1903 – 1978)の作曲で、バレエ作品『ガイーヌ』(最終幕の「剣の舞」がよく知られている)からのもの。

世界最古のキルスト教国ともいわれるアルメニアだが、同国の音楽に触れる機会はなかなかないもの。今作は歴史ある楽団によって奏でられる本作は、アルメニア音楽・アルメニアン・ジャズの入門編としても最適な一枚だ。

アルメン・ヒュスナンツ作曲の「Flowery」(本作未収録曲)

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