境界なき多ジャンルの混淆。驚異のマルチ奏者ストラショ・テメルコフスキー

Stracho Temelkovski - The Sound Braka

無国籍・無時代性の音楽。Stracho Temelkovski デビュー作

マケドニアにルーツを持ち、独学でベースやヴィオラ、マンドリン、パーカッション、ヒューマンビートボックスなどをマスターしたフランスの音楽家ストラショ・テメルコフスキー(Stracho Temelkovski)のデビュー作『The Sound Braka』。40歳を越えてのデビューアルバムは、今まで広く明らかにされていなかったその卓越した才能を世界に知らしめる驚異的なアルバムだ。

バンド編成もストラショ・テメルコフスキーが前述の楽器群を弾いているほか、アコーディオン、サックス、ピアノ、さらにはシタール奏者もおり特徴が際立つ。バルカン音楽やジャズを基調としつつ、ラテン、インド音楽などがシームレスに混ざり合い、さらにはルーパーやエフェクター、テメルコフスキーによるヒューマンビートボックスによって音楽の時代性すらも曖昧にする。どうしてこれほどまでに器用なマルチミュージシャンがこれまで全く無名の存在だったのか、疑問符が大量についてしまう。

アルバムからの最初のMVは(2)「Stracho Temelkovski」。
ヒューマンビートボックスのビートに乗せてオリエンタルな旋律のユニゾンで始まり、不思議な温度感で楽曲は進行する。

シタールのドローンやサンプリングされたSFXが鳴り響き、ベースはワンノートで貫き通す(1)「Du Dernier au Premier Soupir」、世にも奇妙なタンゴ(5)「Manzanilla」、ラストのインド的宇宙観が垣間見える(8)「Odime Sine」などなど、アルバムの収録曲はどれも本当に魅力的だ。どこかの民族音楽のようではあるが、どこの地域か特定できない音楽。伝統的に受け継がれてきた音楽のようでありながら、現代的な側面も持ち時代性すら特定できない音楽──。これは無国籍・無時代音楽、とでも形容するべきだろうか。兎にも角にも、最高に面白い作品である。

(3)「Gipsy」のMV。バルカン音楽のようでいて、やはりシタールの影響か無国籍感が漂う。

Stracho Temelkovski 略歴

ストラショ・テメルコフスキは1978年フランス・グレノーブル生まれ。楽器遍歴は最初にエレキギターを弾き、次にベース、パーカッション、サンプリング、プログラミングを覚えていったという。
15歳で結成した最初のグループではジャズファンクとダブを東欧の伝統音楽とミックスした独特の音楽を演奏していた。
23歳頃から刑務所での音楽ワークショップの活動を開始し、いくつかのレコーディングを行ったが、その抑留者の中にいた15歳の少年からビートボックスのやり方を教わったという。

影響を受けた音楽家として挙げているのは幼少期に聴いたバルカン・ブラスバンド、J.S.バッハ、ドクター・ドレー(Dr. Dre)、プロディジー(The Prodigy)、ジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)、パコ・デ・ルシア(Paco de Lucía)、ダフト・パンク(Daft Punk)など幅広い。

これまでにグルノーブルに拠点を置くグナワ系フュージョンのバンドGnawa Diffusionへの参加や、キューバの巨匠オマール・ソーサとのデュオ・ライヴ(←必見!)など、唯一無二の存在感を放っている。

ベース、パーカッション、ヒューマンビートボックスを同時にこなす離れ業を見せるストラショ・テメルコフスキーのライヴ映像

Stracho Temelkovski – bass, mandole, guitar, percussions, beatbox
Jean-François Baëz – accordion
Jean-Charles Richard – saxophones
Ashraf Sharif Khan – sitar
Jean-Marie Machado – piano
Antony Gatta – percussions

Stracho Temelkovski - The Sound Braka
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