質素なようで複雑な和声感覚が魅力。サンパウロのSSWセッサ(Sessa)新譜『Estrela Acesa』

Sessa - Estrela Acesa

様々な音楽的土壌が育んだ、繊細な感性のための音楽

セッサ(Sessa)のステージネームで知られるセルジオ・サイエギ(Sérgio Sayeg)が新作『Estrela Acesa』をリリースした。

彼が気だるく甘美に歌う内容は、実際はパンデミックの世界やファシストの大統領が支配する社会への批判で、少ないコードとシンプルな楽曲構成ながらひとつひとつのハーモニーには複雑な響きがあり、淡々と刻まれるリズムにも人生の儚さへの憂いや何かへの躊躇すら感じさせる。遠くから聴こえてくるような深めのエフェクトのかかった女性コーラスや風の囁き、あるいは叫びのようなフルートも印象的だ。

6弦のガットギターでミニマムなシーケンスを繰り返しながら囁くように歌うSessa。エラスモ・カルロス(Erasmos Carlos)やジョアン・ドナート(João Donato)といったブラジルの巨匠たちの影響を受けているが、リズムで最も影響されたのはルーツレゲエの巨匠ジョニー・クラーク(Johnny Clarke)とのこと。

(1)「Gostar do Mundo」

これらの音楽はパンデミックの初期に引っ越したサンパウロ沖合の豊かな自然や明媚なビーチで知られるイリャベラ島の自身のスタジオで生まれたという。聴けば聞くほどに繊細な感覚に満ちており、五感を研ぎ澄まして聴きたい作品だ。

Sessa プロフィール

Sessaことセルジオ・サイエギはサンパウロのユダヤ系の家庭に生まれた。幼少時はシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)で聖歌などの音楽に触れ、それは今でも好きだという。家族のレコード・コレクションにはミルトン・ナシメントやロー・ボルジェスの『Clube Da Esquina』や、ビートルズの所謂赤盤青盤が並んでいた。
10代でガレージロック、ニューオリンズソウルなどのダーティで生々しいサウンドに夢中になり、その頃家族とともにニューヨークに移住すると、ジミ・ヘンドリックス、MC5、ストゥージズ、ブラック・サバスなどに深くのめり込んでいったようだ。

しかしそんな中でも故郷ブラジルのボサノヴァ、トロピカリア、MPBといった音楽への敬愛を抱き続け、さらにファラオ・サンダース、アリス・コルトレーンといったスピリチュアル・ジャズにも傾倒。

今作ではそうした彼を形成する様々なベクトルを持った音楽的素養が混ざり合い、複雑で味わい深いスープを作っている。

Sessa – vocals, nylon guitar, percussion
Biel Basile – drums, percussion, piano
Marcelo Cabral – bass
Ciça Góes – vocals, percussion
Ina – vocals, percussion
Paloma Mecozzi – vocals, percussion
Lau Ra – vocals, percussion
Kate Goddard – violin
Ruby Wang – violin
Hannah Selin – viola
Ansel Cohen – cello
Simon Hanes – conducting
Gabriel Milliet – flutes

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