秋晴れのように爽快。トランペットとピアノの兄弟デュオ、ジュリアン&ローマン・ヴァッサーフール新譜

Julian & Roman Wasserfuhr - Mosaic

Julian & Roman Wasserfuhr 4年ぶり新譜『Mosaic』

ドイツの兄弟デュオ、ジュリアン&ローマン・ヴァッサーフール(Julian & Roman Wasserfuhr) が4年ぶりの新譜『Mosaic』をリリースした。今作では12人のミュージシャンをゲストに迎え、ロマンティックでポジティヴな音楽を創出。秋晴れのように爽やかな気分にさせてくれる素敵なジャズに仕上がっている。

楽曲ごとにゲストも異なり、リズムも曲調も多彩だが、アルバムには終始一貫した活力がある。
多くはオリジナルだが、アルバムにはニルヴァーナの(8)「Smells Like Teen Spirit」のカヴァーも収録。 グランジは彼らのアルバムには合わないのでは…と思いきや、ここではスムースジャズのような耳馴染みのよさ。弟ユリアンのトランペットは最初は少し憂いや陰を帯びるが、対照的に兄ローマンのピアノが硬質で明るい音色で支え、ジュリアンもソロでは突き抜けるような音色を響かせ兄のソロにバトンタッチする。

伝統的なジャズが底流にありながらも、音響的にはよく洗練され現代的。アルバムの中で特に目立つのは(7)「Never Hold Back」で、ここではフリースタイル・ラッパーのハリー・マック(Harry Mack)が登場しキレの良いラップを聴かせる。

アルバムの紹介動画。

とにかく、聴いていて本当に気持ちの良い作品だ。バップと現代ジャズをストレートに繋ぐような時代感の曖昧性もたまらないし、旋律もコードもリズムも明瞭で聴きやすいところもいい。かといってチープさはなく、ACTレーベルらしい芸術性と先進性が両立した稀有な作品である。

兄弟は今作のタイトルを「モザイク」とした理由について、下記のように語っている。

個々の曲はもちろん、それらにまつわる感情も実に多様で、レコーディングのために様々なミュージシャンや友人を選んだにもかかわらず、このアルバムは全体として統一感のある絵になっている。それは、この2年間の僕らの経験、会話、人々との出会いから生まれたものなんだ。

www.highresaudio.com

兄弟デュオ Julian & Roman Wasserfuhr の軌跡

ジュリアン&ローマン・ヴァッサーフールはピアニストの兄ローマン(1985年生まれ)とトランペッターの弟ジュリアン(1987年生まれ)の兄弟デュオ。ケルンの北東にある町ヒュッケスヴァーゲン(Hückeswagen)に生まれ育ち、今もそこを拠点にしている。父親はクラリネット奏者で音楽教師。
チェット・ベイカーの軌跡をたどったデビューアルバム『Remember Chet』(2006年)をACTが立ち上げたシリーズ“Young German Jazz”からリリースしドイツのジャズシーンに飛び込むと、その後は同レーベルからいくつもの作品をリリースし国際的な名声を得ていった。

2012年作『Relax – Jazzed 1』では栄誉あるドイツ・ジャズ・アワードを受賞。名実ともにドイツを代表するジャズ・アーティストとなっている。

Julian Wasserfuhr – trumpet
Roman Wasserfuhr – piano, keyboards

Guests :
Tim Lefebvre – bass
Keith Carlock – drums
Harry Mack – vocals
Markus Schieferdecker – bass
Oliver Rehmann – drums
Tony Lakatos – tenor sax
Paul Heller – tenor sax
Martin Scales – guitar
Vitaliy Zolotov – guitar
Jörg Brinkmann – cello
Axel Lindner – violin, viola
Sebastiaan Cornelissen – drums

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