ベルリン生まれ、UKで活動する注目のSSW、サーラ・グー
ドイツ人でクリスチャンで白人の母と、ソマリア人でムスリムで黒人の父との間にベルリンで生まれ、現在はUKで活動するシンガーソングライター、サーラ・グー(Sahra Gure)が素晴らしい。2019年にEP『Love Me with Me』でデビューし、2022年に2作目となる新作EP『Stolen Moments』をリリース。新作ではサウンドもソングライティングもますます洗練されており、R&Bやネオソウル、ジャズの混淆であり適度にキャッチー&ポップな感性は、あらためて新世代の最注目音楽家であることを知らしめる。
新作EPは5曲収録とボリューム的には物足りないが、非常に素晴らしい楽曲が揃っており濃密な内容となっている。
(1)「Me & You」ではチル感のある洗練されたリズムを主体に、サウスロンドンのシーンで人気急上昇中のラッパー、Bawoをフィーチュア。落ち着いたコンテンポラリー・R&Bに仕上げている。
(2)「Try So Hard」は個人的に今作のリードトラックに推したい1曲で、メロディーのキャッチーさ、ピアノをフィーチュアしたサウンド、効果的なトランペット、音響処理など含め総合的に高く評価したい楽曲だ。
先行してシングルでリリースされた(3)「Sorry」では、失恋という人間関係の終焉で生じる複雑な感情を詩的な感性で歌う。パートナーから離れることで自分自身の自由やアイデンティティーの感覚を取り戻すという感覚は多くの人にとって共感をもたらすものだろうし、こうした提示は彼女のソングライターとしての豊かな感性を証明して見せている。
幼少時から父が歌うソマリアの曲を聴くのが大好きだったというサーラ・グー。14歳で歌への情熱を発見するまでは、彼女はクラシックのヴァイオリンを習っていた。冒頭に書いたように、彼女の半生は様々な文化の豊かな混淆に裏付けられている。
2019年に「Musicians’ Company Young Jazz Musician Award 2019」を受賞、英国のジャズ月刊誌Jazzwiseからも「2020に注目すべき人物」にも選出されたサーラ・グー。今作であらためてその才能を証明した彼女の最初のフルレンス・アルバムが今から非常に楽しみだ。