キケ・シネシ×マカレナ・ロブレドが多彩なゲストを迎えた新作
「Cielo Abierto」などの名曲で知られるアルゼンチンの世界的ギタリスト、キケ・シネシ（Quique Sinesi）と、女優としても活躍する同国の歌手マカレナ・ロブレド（Macarena Robledo）の双頭名義の作品『Cielos』。キケ・シネシの7弦ギターやチャランゴ、マカレナ・ロブレドの歌はどこまでも澄み渡る空のように清らかで、ジャズや伝統音楽をハイレベルに融合し文化として育むアルゼンチン特有の美しさを湛えた素晴らしい作品だ。
多くの曲は多重録音が効果的に活用され、小編成ながらも優れたサウンドスケープを描き出す。ゲスト・アーティストも多彩でそれぞれの曲に異なる聴きどころがあることも魅力的だ。
ゲストに歌手ロリ・モリーナ（Loli Molina）を迎えた(1)「Color Cielo」はキケ・シネシの流麗なギターの上で二人の女性ヴォーカリストが掛け合い、ハーモニーを重ね、色彩感に満ちた空を描いていく。キケ・シネシも7弦ギターによる表現力豊かなバッキングだけでなく、ギター・ソロやチャランゴの多重録音で空のキャンバスに自由な発想の絵を描いていく。
マカレナ・ロブレドの伸びやかな歌唱が印象的な(2)「Diamante」はエレクトリック・ギターのイントロで始まるが、これを弾いているのはウルグアイのギタリスト、ニコラス・イバルブル（Nicolas Ibarburu）。(3)「El Río」では同じくウルグアイのウーゴ・ファトルーソ（Hugo Fattoruso）がアコーディオンでゲスト参加する。
今作で唯一、打楽器が入るのはウルグアイのパーカッション奏者キンティーノ・シナーリ（Quintino Cinalli）参加の(6)「Mantra Candombé para Dejar Ir」。さらに(7)「Hojas de Abril」には日本人ヴァイオリン奏者ななこ（Nanaco Tarui）が参加し幽玄なヴァイオリンの響きを重ねてゆく。
類稀な才能をもった音の芸術家たちが丁寧に描き出す世界の美しさをたっぷりと堪能できる、そんな傑作だ。
Quique Sinesi プロフィール
キケ・シネシ（Quique Sinesi）は1960年生まれのギタリスト/作曲家。1980年代よりプロの音楽家としての活動を開始し、これまでに発表した作品は数知れない。
ピアニストのパブロ・シーグレル（Pablo Ziegler）と共演した2003年のアルバム『Bajo Cero』ではラテングラミー賞も受賞している。
また、1996年に発表したアルバム『Cielo Abierto』の表題曲「Cielo Abierto（澄みきった空）」はクラシックギターの定番曲としても人気で、数多くのギタリストによってカヴァーされている。
Viuda e Hijas de Roque Enroll のオリジナルメンバーとして知られるロック歌手/ベーシストのクラウディア・シネシ（Claudia Sinesi）は実妹。
Quique Sinesi – guitar, charango
Macarena Robledo – vocal
Guests :
Loli Molina – vocal (1)
Nicolas Ibarburu – electric guitar (2), acoustic guitar (4)
Hugo Fattoruso – accordion (3)
Quintino Cinalli – percussion (6)
Nanaco Tarui – violin (7)
Nadia Larcher – vocal (9)