リオ出身の新たな才能、Tunico 衝撃のデビュー作
疾走する軽やかなグルーヴ、爽やかなコーラスと複雑なハーモニー。昂揚するサンバやマラカトゥのリズム。様々な楽器が入り乱れる即興のソロ。聴くものの語彙を奪い、ただただ至福としか言い表しようのない(1)「Galope」を聴けば、勝手に血が騒ぎ、心が沸き立つ。
これはリオデジャネイロ生まれのギタリスト/サックス奏者/作曲家トゥニコ(Tunico)のデビュー作『Tunico』だ。
クアルテート・ノーヴォ(Quarteto Novo)やバンダ・ブラック・リオ(Banda Black Rio)といったグループの再来と呼ばれることにも納得のサウンドで、作曲とギター、ソプラノサックス、アルトサックスを担当するTunicoのおそるべきセンスが爆発したアルバムに仕上がっている。
(2)「Sambola」はリオの鬼才トロンボーン奏者アントニオ・ネヴィス(Antônio Neves)をフィーチュア。A.C.ジョビンの名曲「Desafinado」の一節を引用するなどユニークかつブラジル音楽への愛の溢れるトロンボーンのソロは聴きどころだ。
ブラジルの伝統的な音楽様式フォホーを現代的にアップデートしたような(4)「Saudade do Sucupira」も素晴らしい。
参加メンバーの中では、まだ日本では無名の存在だがエレクトリック・ギターのアロルド・エイラス(Haroldo Eiras)、ベースのジョルダード・ガスペリン(Giordano Gasperin)などが随所で目立つプレイを見せ、アンサンブル全体を盛り上げている。
ラストの(6)「O Que Virá」は演者はTunicoのみで、彼自身によるナイロン弦ギターとソプラノサックスの多重録音だ。
Tunico 略歴
Tunicoことアントニオ・セッチン(Antonio Secchin)は芸術一家に生まれ、幼い頃からギターを習った。今でもそれが彼の主要な作曲方法であり続けているが、18歳の頃にサックスに引き寄せられ始め、独学でソプラノサックスを習得。地下鉄の駅や街角でのストリート・ライヴからクラブへと活動を広げていき、アーティストとして経験を積み上げてきた。
パンデミックの時代に、彼はリオデジャネイロ州の田舎にある実家に引きこもった。自然環境の中で息を吹き返し、熟考するための時間と空間を与えられた彼は、音楽人生を通じて書いてきた楽曲に肉付けをし、ひとまとまりの作品として仕上げる作業に取り掛かった。
Tunicoのデビュー作『Tunico』は、ブラジル音楽を世界に紹介するイギリス・ロンドンのレーベルであるFar Out Recordingsからリリースされている。
Tunico – guitar, soprano saxophone, alto saxophone, vocals
Chico Lira – keyboards
Haroldo Eiras – guitar
Chico Brown – solo guitar
Bernardo Schaeffer – flute
Katarina Assef – vocals
Giordano Gasperin – bass
Gabriel Barbosa – drums
Boka Reis – percussion
Antonio Neves – trombone
Illan Becker – keyboard, saw
Julio Santa Cecília – effects