HipHop世代のハープ奏者ブランディー・ヤンガー、先駆者への敬意を示す新譜『Brand New Life』

Brandee Younger - Brand New Life

ブランディー・ヤンガー、ドロシー・アシュビーへのオマージュ作

米国のハープ奏者/作曲家、ブランディー・ヤンガー(Brandee Younger)の新譜『Brand New Life』がリリースされた。今作はマカヤ・マクレイヴン(Makaya McCraven)をプロデューサー、ドラマーとして迎え、ジャズ・ハープの先駆者ドロシー・アシュビー(Dorothy Ashby, 1932 – 1986)への敬意を全面的に表した作品になっている。

ブランディー・ヤンガーがドロシー・アシュビーを知ったのはHipHopやR&Bの曲のサンプリングを通してだったという。今作でもドロシー・アシュビーが演奏したものがサンプリングのネタとして多用されたミシェル・ルグラン(Michel Legrand)の名曲(9)「The Windmills of Your Mind」や、今作中もっともHipHop色の強い(4)「Livin’ And Lovin’ In My Own Way」などでそうしたルーツを主張する。

(1)「You’re A Girl For One Man Only」はドロシー・アシュビーの未発表曲で、ここでは短3度ごとに音を積み重ねたディミニッシュ・コードの響きがまるで天上の音楽のように美しい。倍音成分の多い楽器の場合、ディミニッシュコードは濁った不協和音になってしまうが、倍音の少ないハープの柔らかな音は不協和音どころか、むしろ清々しい美しさが新鮮だ。中盤ではジョエル・ロス(Joel Ross)のヴィブラフォンがハープとの境界を曖昧に混ざり合っていき、極上の音楽体験をもたらしてくれる。

(1)「You’re A Girl For One Man Only」

アルバムにはマカヤ・マクレイヴンやジョエル・ロスのほか、ベース奏者ラシャーン・カーター(Rashaan Carter)、フルート奏者デショーン・ジョーンズ(DeSean Jones)やDJのナインス・ワンダー(9th Wonder)、さらにはゲストでミシェル・ンデゲオチェロ(Meshell Ndegeocello)、ピート・ロック(Pete Rock)などが参加。

ラストにはスティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)の名曲「If It’s Magic」のカヴァーを収録。歴史的名盤『キー・オブ・ライフ(Songs in the Key of Life)』に収録されていた原曲で印象的なハープを弾いていたのはもちろん、ドロシー・アシュビーだ。

(10)「If It’s Magic」

Brandee Younger 略歴

ブランディー・ヤンガーは1983年ニューヨーク州生まれのハープ奏者。
ドロシー・アシュビーやアリス・コルトレーンによって開拓されてきたジャズ・ハープの軌跡を継承しつつ、ソウルやファンク、HipHopの息吹を吹き込む現代最高のハーピストのひとりとして知られている。

これまでにファラオ・サンダース(Pharoah Sanders)、ジャック・デジョネット(Jack DeJohnette)、チャーリー・ヘイデン(Charlie Haden)といったジャズの巨匠たちから、ローリン・ヒル(Lauryn Hill)、ジョン・レジェンド(John Legend)などの人気アーティストらと数多く共演をしており、自身のリーダー作『Soul Awakening』(2019年)や『Wax & Wane』(2016年)なども高く評価されている。

Brandee Younger – harp, vocals (5)
Rashaan Carter – bass
Makaya McCraven – drums
Joel Ross – vibraphone
DeSean Jones – flute
Yuri Popowycz – strings
Mumu Fresh – vocals (2)  
Pete Rock – drum programming (2)  
Linda McNease-Younger – vocals (5)  
Sharon McNease-Griggs – vocals (5)  
Meshell Ndegeocello – vocals (8) 
Junius Paul – bass (9)  
9th Wonder – drum programming additional production

関連記事

Brandee Younger - Brand New Life
最新情報をチェックしよう!