天使のような歌声。ガボンにルーツをもつSSWアナイス・カルドー EP『Pink Magnolia』

Anais Cardot - Pink Magnolia

ガボン系フランス人SSW、アナイス・カルドー

中央アフリカのガボンにルーツを持つフランスのシンガーソングライター、アナイス・カルドー(Anaïs Cardot)が素晴らしい。エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)やジョアン・ジルベルト(João Gilberto)などに影響を受けてきたという彼女のデビュー作となるEP『Pink Magnolia』で、内省的でロマンティックな陰を含んだ歌を、驚くほど繊細で魅力的な声で歌う。逸材、と感じられずにいられない最高のデビューだ。

音楽のおかげで自分の気持ちを解放できる、という彼女の表現力は英語で歌う冒頭の小品(1)「Can’t Explain」から際立っているが、英語とスペイン語を交えた(2)「¿Que Te Gusta De Mí?」、フランス語の(3)「Colors」と聴き進めるうちにその少女的な歌声の中に秘めた深みが伝わってくる。楽曲のテーマに自然と据えられているのは自己や他者への愛情、メンタルヘルス、複雑な感情など。彼女の歌や音楽は優雅で誠実だが、静かに感情を揺さぶり、昂らせる不思議な魅力がある。

(3)「Colors」のMV。アコースティック楽器の優しい音に儚げな声を乗せるが、ドラムスのリズムに意志の強さも感じさせる

EPの後半3曲もあまりに美しい。
(4)「Only Heaven」での少しくぐもった印象のピアノの音色は彼女の心の靄だろうか。
ソウルフルに歌う(5)「Purple Room」には友人たちと思われる多数の名前が共作者としてクレジットされている。おそらく、アメリカ・ロサンゼルスで出会った彼女の音楽仲間であり友人たちだろう。周囲からの愛情を、戸惑いながらも受け止めるアナイス・カルドーの笑顔が浮かぶ。
(6)「Élodie」のリラックスしたガットギターの音色も最高だ。歌詞はポルトガル語で、ボサノヴァからの影響も表れているようだ。

アナイス・カルドーは自らの内側へと深く深く、感情の生まれる場所を探っていく。
天使の歌声の、最高のシンガーが現れた。

(1)「Can’t Explain」。映像ディレクターは日本出身の大橋華子(Hanako Ohashi)が務めている。

Anais Cardot プロフィール

アナイス・カルドーの家庭環境には常に音楽やアートがあった。幼少時、家庭では常にジャズ、R&B、レゲエ、インディーズ音楽など様々な種類の音楽に触れていた。
何よりも彼女にもっとも大きな影響を与えたのは家族だった。

ガボンとフランスの架け橋となり、ミュージシャン、ボクサー、そして会社経営者だった父親のボウダ・カルドー(Bouddha Cardot)は世界中の音楽への扉を彼女に開いた。
母親は、普通に生活することすら難しいという先天性の関節拘縮症という脚の難病をもって生まれ、医師からは歩くことも座ることさえも出来ないだろうと言われたアナイスに、彼女が自らの力で動けるようになる方法を常に諦めずに探っていた。
いとこや兄弟の多くはビジュアルアーティストだったため、アナイスは常にアートに囲まれ、インスピレーションを受ける機会が多くあった。

父ボウダ・カルドーはアナイスが10歳の頃に亡くなっている。その直後、アナイスは3000曲の入った彼のiPodを見つけ、それから1年間にわたってそれを聴き続けた。この頃の体験が、音楽の表現者になるという彼女の夢を形作った。

2021年にロサンゼルスのクリエイティブ・コミュニティを通じて自分の表現を追求する挑戦を始める。多様性に富んだ仲間たちと多くの時間を過ごすことで、彼女自身も表現者としての秘めた才能を発揮していった。

Anais Cardot - Pink Magnolia
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