フランスの若き天才ギタリスト、ティボー・ガルシアがバリオスに捧げる最高のギター音楽

Thibaut Garcia - Agustín Barrios: El Bohemio

ティボー・ガルシアによるバリオス作品集の決定版

フランスの若き天才ギタリスト、ティボー・ガルシア(Thibaut Garcia)の新譜『El Bohemio』は、南米パラグアイの作曲家/ギタリストのアグスティン・バリオス=マンゴレ(Agustín Barrios Mangoré, 1885 – 1944)曲集。「大聖堂」「森に夢みる」「最後のトレモロ」「フリア・フロリダ」といったバリオスの名曲を、まるでギターが歌うかのような繊細で豊かな表現力で聴かせてくれるアルバムだ。

アルバムにはバリオス作曲の16曲に加え、ショパンの(4)「24 Preludes, Op. 28」(24の前奏曲 Op.28)、ベートーヴェンの「月光ソナタ」からの冒頭楽章(12)「Valses, Op.8」、そしてシューマンの『子供の情景』より(19)「Träumerei」(トロイメライ)という元々ピアノのために書かれた楽曲をバリオスがギターで演奏するためにアレンジした作品も収録。そしてラスト(23)「Caazapá」はバリオス自身による貴重なギター演奏音源となっている。

(5)「Una limosnita por el amor de Dios」(邦題:最後のトレモロ)

(8)「Vidalita con variaciones」ではギターの演奏に乗せてバリオスの詩「El Bohemio」が、そして(17)「Profesión de fé」でも同様にパラグアイの詩人オルランド・ロハス(Orlando Rojas)によるバリオスの詩の朗読が収録されている。アルバムタイトルの由来となった前者は自身を放浪の吟遊詩人として描いたもので、後者はニツガ・マンゴレ(Nitsuga Mangoré, ニツガはアグスティンの逆綴り、マンゴレはグアラニー族の伝説的な酋長の名前)という偽名を名乗りグアラニー族の伝統衣装を着て演奏したことでも知られるバリオスによる、グアラニー族を称えた詩だ。ここに後者の詩を拙訳で紹介する:

Profesión de fé(信仰告白)

トゥパ、至高の精霊そして我が種族の守護者が
ある日花咲く森の中で私を見つけた
トゥパは私にこう言った
「この不思議な箱を開け 隠された秘密を見つけておくれ」

トゥパは箱の中に森のさえずるすべての鳥と
草木の嘆きの声を閉じ込め 私に手渡した
私はその言葉に従い 箱を胸にしっかりと引き寄せた
箱を抱きしめ 泉のほとりで幾月かを過ごした

ある夜 月の女神ヤシイは
水晶に映るインディオの魂の悲しみを感じとり
6本の銀色の光を与えてくれた
これがあれば箱の中の秘密がわかるのだと

そして奇跡は起こった
箱の底から 不思議なことに
アメリカの自然
すべての乙女たちの声による
素晴らしい交響曲が芽生えたのだ

guitarra.artepulsado.com

この素敵な詩に登場する“6本の銀色の光”(seis rayos de plata)とは紛れもなくギターの弦のことだ。
バリオスが書いたギター音楽を聴いたときに感じる魂の琴線に触れるような感覚は、その音楽の根底にパラグアイの大地や自然によって生まれ育まれたという考え方があるからかもしれない。

このアルバムは現在ではクラシック・ギタリストの重要なレパートリーとなったバリオスの名曲たちを、その魂を余すことなく再現する流麗な超絶技巧で楽しめるクラシックギター・ファン必聴の作品だ。それだけでなく、詩篇なども交えた構成は20世紀最高のギター音楽家であるバリオスへの最高のトリビュートといえるだろう。

(22)「La Catedral III. Allegro solemne」(大聖堂 第三楽章)

若手クラシック・ギタリストの最高峰、Thibaut Garcia

ティボー・ガルシアは1994年フランス・トゥールーズ生まれのクラシックギタリスト。スペインにルーツを持つ家系に生まれた彼は7歳でギターを弾き始め、16歳でパリ国立高等音楽院に入学し、オリヴィエ・シャサン(Olivier Chassain)やジュディカエル・ペロワ(Judicael Perroy)に師事した。

2013年のセビリアの国際コンテストで1位になり、2014年にスペインのホセ・トマス国際コンテストで1位、2015年アメリカギター財団の1位など数々の受賞歴を誇る。2014年に初のアルバム『Demain dès l’aube』をNaxosからリリース。2016年にはトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団との協演でコンチェルト・デビュー、その後BBC交響楽団等と協演。2016年以降はWarner Classicsから複数のアルバムをリリースしている。

日本では福山雅治と石田ゆり子が主演した映画『マチネの終わりに』(2019年)にギタリストとして本人役で出演したことで広く知られるようになった。

Thibaut Garcia – guitar (1-16, 18-22)
Orlando Rojas – poetry reading (8, 17)
Agustín Barrios – guitar (23)

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